半兵衛

大地の半兵衛のレビュー・感想・評価

大地(1930年製作の映画)
4.5
集団農業のPR映画を、これほどまでに美しい映像詩に仕立て上げるドブジェンコ監督は素晴らしくクレージーな作家に違いない(褒め言葉)。冒頭の風にたなびく麦の映像はまるで一流の絵画のような趣が感じられたし、そのあとの死にゆく老人とそれを優しく包む大地の豊穣なイメージショットのモンタージュは映画だからこそなしえる美となって見るものを唸らさせる。その後も洗練されたショットが随所に登場するため、そちらに気を取られて宣伝パートの記憶はほとんど無くなったけどね。

後半はある出来事をきっかけに農民の反乱が起こり、富農への反逆がはじまるところはいかにもソ連映画らしいが暴力行為は起こさずあくまで大地とそこに地をつけて働く農民たちを美しく捉えることに重きを成している印象が。雨に濡れた作物(あまりの美しさに目を奪われる)からのラストカットも「人民よ立て」というメッセージより大地と親しむ人間を素直に祝福しているよう、でもそれが当時党員などから軟弱と見なされた理由なのかも。

登場する素人俳優たちの、プロの役者にはない長年農業に従事してきたことが伝わる厳つい顔立ちがドラマの内容によく合っていた。
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