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それでもボクはやってないのSkylerのレビュー・感想・評価

それでもボクはやってない(2007年製作の映画)
3.8
おそらく大きなテーマは2つ
冤罪はいつでも誰の身にも起こり得る
日本の司法制度のあり方を問う

ある日、電車の中でまわりに迷惑な行動をとっていた男性が痴漢容疑で逮捕される
無実を訴え、目撃者を見つけ出すもその甲斐なく有罪判決を受けるまでのはなし

真実は証明されるはずと期待する誰もが裏切られる結末に、国家権力を前に一般人の無力を嫌というほど見せつけられる
憎むべきは痴漢という卑劣な行為
だけど冤罪もまた恐ろしい

この中で気になったことがいくつかある
一つは、犯人ではなく容疑者の段階での人権無視
たくさんの容疑者が狭い部屋の中に入れられて、トイレは一枚の衝立の向う
トイレットペーパーは事前にリクエストして、使う分だけその都度もらう
大でも小でもそこで用を足さなければならない
ここに人権は存在しない

二つ目は、被害者少女vs痴漢容疑者という構図
15歳の被害者少女の裁判での供述が不自然に信頼を欠くものだった
簡単な事まで覚えていない事が多すぎて
、この曖昧な供述を鵜呑みにする検察の杜撰さが浮き彫りにされている

にも関わらず、この日本で痴漢が起こる最大要因である満員電車の解消が見られない都市部の現実、仕事とはいえ駅員の行動の是非は全く問題視されることは無い
ここがきちんと描かれていれば傑作になり得た映画だと思う

まるで、冤罪を生み出さないためには、痴漢を軽々しく訴えるなと言わんばかりの脚本に不自然さを感じる

実際に痴漢の冤罪被害者になられた方にはお気の毒としか言いようがないが、満員電車に乗るときに痴漢の本を持ち歩いている時点で、正直巻き込まれても仕方がないかと

ただし、痴漢以外の犯罪であっても起訴案件の99.9%が有罪
この事実は世界的に見ても恐ろしい数字だという事に変わりない
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