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散り行く花のmのレビュー・感想・評価

散り行く花(1919年製作の映画)
3.6
個人的にサイレント映画は苦手で自分から見ることはない。

サイレント映画が苦手な理由の一つに舞台用のようなオーバーな演技がある。音声としての台詞がないので必然ではあっても自然な演技に魅力を感じる自分としてはなかなか馴染めない。
この作品も特にそういう色が強い中、リリアンギッシュは本当にどんな表情をしていても美しいと思う。
中国人との束の間の幸せな時間に見せる表情、斧でドアを破ってくる父親に怯える表情や無理やり笑顔を作る場面は忘れられない。

映画の父と言われるグリフィスが確立したさまざまな技法の中に、この作品で使われているクローズアップがあるという。役者の表情に大胆に寄って撮ることでその感情や美しさを鑑賞者に伝えることに成功している。
他にも、たびたび起用していたリリアンギッシュを主演として最大限に美しく見せることにグリフィスは力を注いだらしい。
どんなに機材や技術が発展していない昔の作品でも、映画はただ物や人を映したものではなく、こう見せたいと思うように見せるための演出が入っており、制作者の意図が見える。そういうことを改めて実感させられる作品だった。
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