m

余命10年のmのレビュー・感想・評価

余命10年(2022年製作の映画)
3.8
小説で読んだ時に映像のように頭に浮かんでいたあのシーンが実際に映像化されたらそもそも無かった…とか、原作を先に読んだからこそ考えてしまう部分はあるけど映画としてはもちろん良かった。

四季を感じる描写がとても綺麗だし、当たり前のように過ぎていく春も茉莉にとっては最後の春になるかもしれない、この桜はもう見られないかもしれないものとして茉莉の目には映っているのだと思うと、その美しさが余計に悲しくなる。
関係ないけど、コロナが始まった年の春に「桜は来年も見られるから今年のお花見は自粛してください」と言っているのをテレビで見て、来年の桜が見られない人にとっては何て残酷な言い方なんだろうと思った記憶がある。


小松菜奈ちゃんの演技がとても良い…役を生きていないとああいう涙は流せないと思うし、笑顔とのコントラストがあまりにも強くて。

限られた時間の中で描くのは限界があると思うけど、和人との関係性だったり互いへの思いがもう少し細かかったらより心揺さぶられたんだろうなと思う。演技が良かったからこそ…
打ち込めることを見つけて毎日が輝き出す様子も、やっぱり2時間の中だと駆け足になってしまう。
でも先が分かっている物語だからこそ、あまりしつこく描きすぎても押し付けがましくなってしまうかもしれないとも思うし、これが藤井監督のバランスなんだろうな。
泣かせればいいというものでもないから…

脇を固める俳優さんもそれぞれ存在感があった。
見た目は姉妹に見えないけど黒木華さんがやっぱり見事だと思った。
直接的に思いを露わにするようなシーンはそこまで多くないのに、何気ない会話の中からも妹への気持ちが伝わってくるからとても印象に残る。

「黒木華&原日出子」の組み合わせで思い出すのは『リップヴァンウィンクルの花嫁』だけど今回はしっかり家族だったな、当たり前だけど…


劇伴も良かったし、CMでよく耳にした主題歌もじっくり聴くと歌詞が沁みる。
〜僕の残りの命を二等分して かたっぽをあなたに渡せやしないかい そしたら「せーの」で 来世に乗れる

野田洋次郎はすごい歌詞を書くなと…
こういう路線にはファンの中では賛否両論あったりするけど、つくづく映画との親和性が高いアーティストだなといつも思う。
m

m