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ローラーとバイオリンのbennoのレビュー・感想・評価

ローラーとバイオリン(1960年製作の映画)
4.9
A.タルコフスキーの処女作。

バイオリンを習っている少年サーシャはある日、いじめに遭っているところをセルゲイという青年に助けられます。
そして、階級、年齢の差を超えてふたりは心を通わせていくことに…

先ず、最初にローラーは誰?と思いましたが…
原題が”The steamroller and the Violin.”
ローラーとは、スチームローラー、道路を整備する重機のことでした。笑
そこで、このローラーとバイオリンが、階級を指すメタファーだと分かります。
ローラーは労働者階級、バイオリンは資本家階級…

サーシャがローラー車の運転に夢中になるシーン…
セルゲイがバイオリンの音に聴き惚れるシーン…
階級を超え、別世界の人間の親交を温かく描いています。
自分の大切なものに誇りを持ち、お互いにそれを尊重する…とても美しいストーリー。
ラストは…まるでふたりを恋人のように映します。

そして、タルコフスキーの真骨頂、映像美は言うまでもありません。
冒頭、鏡を何枚も使った万華鏡のような映像…
全体的には色のトーンは高くないのですが、差し色の赤(朱)、黄、青が鮮やか…特にローラー車の朱色…
少年が廃屋でバイオリンを弾くシーンは圧倒的に素晴らしい。
水、鏡、光…は言わずもがな…どこもかしこも素晴らし過ぎます。
また、サーシャを演じている男の子(イゴール)が可愛いのは勿論、大人びた表情がとてもいい。

タルコフスキーの作品は、レンタル向きではないですね…常に手元に置いておきたいと…つくづく思いました。


Thanks to; JTKさん
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