このレビューはネタバレを含みます
篠田正浩監督が表現社を立ち上げ、松竹と製作したパートカラーの女性映画。残念ながら、主演女優がミスキャストとしか思えず、ノレませんでした。
素晴らしいのは能登の古民家の街を、シネスコで撮ったカメラ。構図は大きな見所。能登地方特有の曲垣塀や船板塀を映した貴重な映画です。
開戦直後の舞鶴の軍隊から脱走する男。
貧乏な家計を助ける為、輪島の宿屋で女中として働くまつの(岩下志麻)。
姉の様に慕う女給の律子(小川真由美)が心配する中、小杉(山崎努)の口聞きで、山代温泉で中居として働き出す。ある夜、小杉が中年男を連れてきて、まつのは処女を百円で売る。小杉は脱走兵である事を知られた職場の上役に、まつのを差し出したのだ。
憲兵隊はその事実を突き止め、小杉の所業を新聞記事にする。居場所を無くすまつのは、実家に戻ると、小杉から手紙が来ていて、能登の港町へ捜しにいくが、まつのの後を憲兵が追跡していた------
基本はモノクロで、エンド等、あかね雲の空や衝撃的な場面でのみ、朱色に染まるのですが、処女喪失の緋色には失笑してしまいました。
欠点は二つ。主人公はややオツムが弱い田舎の美人なのですが、私には岩下志麻が壮麗な才女にしか見えませんでした。
もう一つが、全ての女性の役柄に学がなく、愚かに過ぎる一方的な描き方に違和感を禁じ得ないことです。
一応、キネマ旬報の年間8位ではあります。