おたしん

イゴールの約束のおたしんのレビュー・感想・評価

イゴールの約束(1996年製作の映画)
3.6
完全にクセになってるダルデンヌ兄弟の作品。
これは初の監督映画なんですね!

そうそうこの感じ。っていう雰囲気と進み方と終わり方と。
めっちゃ面白いとか泣けるとかじゃないんだけどジワジワと余韻を残される。
社会問題を絡めてたりその他を知らないけど本当に起きてるんだなと思うリアルさで色々考えてしまいます。

先月『息子のまなざし』を見たので再び極厚レンズおじさん出てきてビックリ。
ダルデンヌ兄弟は彼をよくキャスティングしてるんですね。笑
そして毒親っていうね。

学校行かせず働かせてるのは金銭的な問題もありそうだけど手伝わせている内容がグレーでもなく黒なんだよな。
不法滞在者を不法労働させて金を稼ぐって。
イゴールがタバコ吸ったりタトゥー入れたり心配になっちゃいます。
キレて追いかけ回して殴った数分後には笑いながら可愛がってあげてるシーン見てサイコパスにしか見えなかった。

自分都合で息子を使うな。
そういうときだけ全部お前のためだなんて言うな。
2人で歌ってるシーンはあんなに楽しそうな親子だったのに。

従っているだけの息子は成長した。
足を縛りつけたうえで口ごたえして去ったのは反抗でもないと思う。
親だからといって全て尊敬しなければいけないわけではない。
むしろそうならないようにってことを見つけるのもある意味成長だから。

この親に育てられたイゴールが優しい心を持っていて嬉しかった。
まだ染まりきっていない。
誠実な大人になれるはずです。
親を売るつもりはないと言ったもののアシタのことを最優先で考えた言動に感動した。
ハグのシーンは泣きました。
イゴールの色んな感情や思いが溢れ出ていて。

アシタもたくさん苦労して大変なことだらけだとは思うけどイゴールの気持ちが伝わっていなくてすごく悲しかった。
彼の行動が優しさだと捉えられていなかった。
優しさを踏み躙るような言い方しないで!とも思っちゃったけど境遇や背景を知らない以上何も言えないな。

ラストもさすがでした。
問題は終わらず現実は続くと言わんばかりの日常的な駅の風景。
今もこんなことが世界のどこかで起きているようだ。
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