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フェリーニのローマのkojikojiのレビュー・感想・評価

フェリーニのローマ(1972年製作の映画)
3.6
 フェリーニがローマという街に対してどんな思いでいるのか、それを数々のエピソードで描ききる。ドキュメンタリーではない、しかし物語もない変わった映画だ。
 実は、私はこの映画を中学生の時、フェリーニがなんたるものかも知らず映画館に観に行っている。ストーリーのない映画を見せられた中学生は、当然「何これ!」の世界である。その時以来、フェリーニは私には関係のない監督とレッテルを貼っていた。

 ところが先般、「道」を観て、どうしたわけかこの映画が気になってきた。
あれからうん十年、私がどんな風に変わったのか、リトマス紙みたいなものだと思っている。

#1363 2023年 398本目
1972年 イタリア🇮🇹映画
監督:
フェデリコ・フェリーニ
脚本:フェデリコ・フェリーニ
ベルナルディーノ・ザッポーニ
原案:フェデリコ・フェリーニ
ベルナルディーノ・ザッポーニ
音楽:ニノ・ロータ

 結論から言えば、面白くはないが、フェリーニが何を描きたいのか、ローマの味わい、それは感じることができた。
 映画は監督のローマへの強い思いを少年期、青年期、現代を交差させながら描いていく。
 歴史に始まり、そこに生きる雑多な人間たちを、営みを、決して美しいとは思えないものも、美味しそうなスパゲッティも何もかも彼が思うローマをごった煮で描ききる。それこそがローマだと言わんばかりに雑多なローマ、それを描いた映画だ。ローマへの強い愛情を感じる。
 エピソードで一番印象的なのはやっぱりカトリック教会で枢機卿や司教、修道女達によって行われた「教会ファッション·ショー」だろう。修道服を奇抜にアレンジしたモデルが彼等の人々の前に登場する。何という風刺だろう。
 それに売春宿の情景。売春宿に群がる多数の男達の前に、階段から、あるいはエレベーターから次から次にそれぞれの決めポーズをとりながら売春婦が現れる。気に入った男達は女に寄り添い再び2回の部屋へ導かれていく。
 それにしてもこの女達がひどい。お世辞にも綺麗とは言えない。化粧を塗りたくったおばちゃんだ。ところがこの女性達がすごくローマを感じるから不思議。
 土砂降りの雨の撮影風景も信じられないようなシーンだ。情緒も何も、全く感じられないような映像が、何故か心に残る。
 街の風景が次から次に映されて行くが、そこで生きる人々の姿が何故か力強く感じる。
 そしてラスト、深夜様々な遺跡の前をバイク集団がすごいスピード駆け抜ける、遺跡がこのライトで映し出される。この姿は現代のローマが象徴的に描かれているようだ。

leylaさん、それにgenarowlandsさんのレビューで観る気になったのだが、leylaさんのレビューに書かれている4K版の予告編。これをYouTubeで観たが、確かに美しい。この画質でしかも映画館の大画面で観れたら、また違った感想を持つかもしれない。
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