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ヘルボーイのEikeのレビュー・感想・評価

ヘルボーイ(2004年製作の映画)
3.8
SFやホラー映画は昔から新たな才能の登竜門であったわけですが、今やオスカー監督であるメキシコ出身のギレルモ・デル・トロ氏にとって本作はアメリカで初めて自らが希望する作品を作る機会を得たということで思い入れが強い作品だった模様です。

本作「ヘルボーイ」は今や珍しくも何とも無くなったアメコミの映画化作品。
マーベルスタジオの諸作を筆頭にアメコミ映画は今やそれ自体がジャンルと呼べそうなほどその数は増える一方。
そんな中で2004年公開の本作はやはり今見ても上出来だと思います。
その理由は何よりもキャラクター達への愛と製作スタンスに情熱が感じられるからですね。
この作品もご多分にもれず、派手なアクション・スペクタクルシーンの連続ですが、それらを繋ぐ部分にはきっちりと登場人物達のドラマが作り上げられています。
そこが他の多くのアメコミ映画との違い。

何よりもキャラクター命で主演のロン・パールマンに作品の命運を託した潔さが成功の最大の要因ですね。
いかつい容貌のヘルボーイが実は純情で義侠心に厚いナイスガイであることや彼の相棒、半魚人エイブ・サピアンとのコンビネーション、ヘルボーイの「育ての父」である博士との深い絆、ヘルボーイが思いを寄せる真性ゴスっ娘、リズとの恋の行方もきちんとドラマとして成立しています。
アクションシーンと同じ位きちんとドラマ部分に力を入れている、このバランス感覚はキャラクターたちへの愛情があってこそだと思います。

それとクリーチャーがCGだけでなくちゃんと特殊メイク&着ぐるみで描かれている辺りも「やる気」を感じさせてポイントUPですね。
主演のロン・パールマンがヘルボーイになるにはメークアップに4時間かかったそうです(ダグ・ジョーンズ扮する半魚人のエイブ・サピアンのメークにはそれ以上かかったらしい)。
パールマン氏はデル・トロ監督とは前作「ブレード2」でも組んでおり、この主演作にかける思いはひと際強く、タフなヘルボーイ像を作るために激しいトレーニングもこなして相当に鍛えたらしく、体の動きにそれが見て取れますよね。
「ブレード2」が興行面で成功を収めた結果、デル・トロ監督の元には多数の製作依頼のアプローチがあったそうですが、最終的に「ブレード3」と「ハリーポッター:アズカバンの囚人」そして「エイリアンvsプレデター」を蹴って自身が6年かけて企画して来た本作を選んだのだそうです。
そうした熱意が感じられるからこそ、決して「大作」とは呼べない本作を今も楽しく見る事が出来る要因だという気がいたします。
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