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エクソシスト3の消費者のレビュー・感想・評価

エクソシスト3(1990年製作の映画)
4.2
・ジャンル
オカルトホラー/サスペンス

・あらすじ
少女リーガンの悪魔祓いで神父ダミアン・カラスらが死んでから15年
当時関わりのあった警部ウィリアムと神父ジョセフは今でもその出来事が忘れられずにいた
現在、事の起こったジョージタウンでは子供を主とした連続殺人が起きており、ウィリアムはその捜査に従事
彼は15年前に死刑となった“双子座の殺人鬼”ジェームズ・ヴェナマンとの奇妙な手口の一致を怪しんでいた
そしてとうとう決定的な事件が起こる
親交のあった黒人少年トマスのと神父の殺害の後にジョセフが病院で奇妙な形で何者かに殺されたのだ
やがて露わとなる3人の共通点、死んだはずのダミアンと思しき隔離棟の男への疑惑
それらが明らかになると共にジョセフの殺された病院では謎の殺人が相次ぎ始め…

・感想
元祖悪魔祓いホラーの金字塔「エクソシスト」のシリーズ3作目
今作は2作目の内容に不満を抱いた1作目の原作者で脚本家のウィリアム・ピーター・ブラッティが正統続編として執筆した小説「Legion」を自ら映画化した作品となっている

前作が監督、脚本を共に変えられた事や超能力ブームの影響で最早「エクソシスト」である必然性を感じ取れない様な内容になっていたのに対して今作は1作目の悲劇が尾を引いた結果である新たな惨劇を描いている事もあり元来の良さが大分取り戻されていた
抑制された世界観、じわじわと深刻化していく惨状、露わになっていく真実、人間の脆弱さ
そういった古典的なホラー作品としての秀逸さと共に終盤では僅かながら分かりやすい恐怖演出も見られる
作家自らが映画を監督すると残念な出来になりやすいイメージがあっただけに心配だったがそれは杞憂に終わりしっかりと楽しませくれた

主人公ウィリアム警部の神父と親友でありながら現実主義で人智を超えた脅威との間で揺れる様や親友や親しかった少年を殺された事による憔悴と焦り
追い討ちの様に死んだはずだったかつての親友、ダミアンを巻き込まれた事による苦しみと苦渋の決断を迫られる展開
これらも心理描写がしっかりしていたし何より極めて悲劇的で結末も救いがなく物悲しい
鬱映画ではないけれど没入型の悲惨な運命の魅せ方がとにかく重たくて印象的だった
悪魔祓い物だからこそ人間の中身を描く必要があるという事を強く感じさせられる

良い映画というのは内容もさる事ながらラストで醸し出す余韻というのが極めて重要だと個人的には思っている
それを見事に実現してくれていたのが刺さった
1作目の様な分かりやすい恐怖性や不快描写、恐怖演出等を求めた人には物足りないかもしれない
それでも宗教色を滲ませつつも分かりやすい人間的な恐怖や悲哀を描いた作品として今作はまごう事なき名作と感じた
殺人鬼ジェームズ・ヴェナマンに憑かれたダミアンとの対話からは「羊たちの沈黙」におけるハンニバル・レクターを思わせる様な重苦しさや不快さもあるのでサスペンス好きにも楽しめるんじゃないかと

次作は1作目の前日譚を描いた作品
前日譚モノはピンキリだし今作が良かっただけに不安は否めないけどしっかりと元来の重厚感のある内容になっていれば嬉しいなぁ
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