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椿三十郎の都部のレビュー・感想・評価

椿三十郎(1962年製作の映画)
3.8
名作『用心棒』の続編である本作ですが単独作として見ても問題のない作りをしており、前作以上に喜劇性を主張する滑稽な遣り取りを孕ませながらも、三十郎による刃傷沙汰の迫力は忘れず、そしてその極点とも言えるラストの居合勝負の緊張感はとかく素晴らしい。

三十郎が手を差し伸べることになる九人の武士たちのポンコツ具合が思わず笑いを誘うそれで、三十郎の指示を無視して酷い目を見そうになったり処遇を巡って愉快な口論に陥るなど、愛嬌を感じさせながらもダメだコイツら……と三十郎同様の所感を抱かせるに相応しい立ち回り。
かように本作は作中に点在するサブキャラクターの魅力が楽しい作品で、捕虜として生かした敵側の武士の妙にサッパリとした振る舞いや救出した奥方衆ののんびりとした朴訥な物言いなど、三十郎を巡る人間達の諧謔味を帯びた遣り取りが前作にはない味となっている。

とはいえ三十郎の機転によりスレスレで全滅を免れ続ける状況に阿呆な緊張感があるのは事実で、相変わらず緩急が巧みであると思うし、この相手方との頭脳の丁々発止と暴力的な斬り合いのコントラストが作品と三十郎の共通する魅力として配置されているのは面白い。
それを指して、『本当に良い刀とは……』と武士の在り方を巡る言及が成されるのは成程という納得感があって、全ての事を終えた二人の抜き身の武士が最後の最後で使命とは無縁の一瞬の斬り合いに興じることになるラストはやはり話として大変収まりよく感じる。
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