アラシサン弐

殺人の追憶のアラシサン弐のレビュー・感想・評価

殺人の追憶(2003年製作の映画)
4.0
ポン・ジュノ監督が描く暴力には爽快さは皆無で、むしろ暴力が持つ何もかもを台無しにしてしまう爆発力を緊張感の中で惜しげもなく行使してくるので、喪失感すら感じる。

「暴力を徐々に失っていく」方と、
「暴力を徐々に覚えていく」方の
二人の刑事の対比も秀逸。
本当に「徐々に」な演技も素晴らしかった。
この監督ドロップキック好きだな。

どちらの刑事も「分からなくなった」状態に向かっていくのは、暴力を一度でも行使した人間を決して肯定しない監督の気概にも感じた。

展開もコメディかと思いきや、急にサスペンスやホラー(個人的に)など、ジャンル間を縦横無尽に横断して飽きることがないけど、通底して内包されている不条理がやるせない。

意味のない自白の強要に時間を無駄にする警察、デモ鎮圧で忙しくて動けない機動隊、空襲訓練で消灯される村。
サイコな犯行に、当時の韓国が抱える社会問題が嫌すぎるシナジーを与えてしまっていて、小さなコミュニティでの出来事かと思いきや社会全体を巻き込んでいて、立ち向かう先への大きさに虚しくもなる。
捜査の電話してイタズラ電話扱いされるシーンとか当時の警察がいかに信頼されてないかが分かるな。
アラシサン弐

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