ハム

殺人の追憶のハムのネタバレレビュー・内容・結末

殺人の追憶(2003年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

『韓国映画 この容赦なき人生』から

韓国で実際に起きた未解決連続殺人事件を元にした映画

地元刑事(パク刑事と短気な相棒チョ刑事)とソウルから来た刑事(ソ刑事)が対立しながらも捜査を続ける

冒頭、「人を見る目がある」と豪語するパク刑事は、最後には「俺にはもう分からない」と警察を辞めてしまう

ソウルから来た「書類は嘘をつかない」と言い張っていたソ刑事は、最後にはDNA鑑定の結果を唾棄し「何かの間違いだ…」と、容疑者のパク(演じたパク・ヘイルは、後の「別れる決心」の主演)に向けて発砲までしてしまう

捜査が二転三転するうちに、対立していた2人がこうした変遷を辿る構成が面白い

サスペンスとしても、「雨の日」に「赤い服」を着た女性が狙われる、ラジオで「憂鬱な手紙」がリクエストされた日に事件が起きる、「柔らかい手の男」など、手掛かりが出るたび進展を見せるか…と期待を抱かせる構成になっていて観入ってしまう
(パク刑事が「隠毛が落ちていないから無毛症のやつだ」と言ったのには笑ってしまう。身内に全く相手にされず自分だけで自腹で銭湯に行っているのだから尚更だ)

繰り返しの感想だけど、パク刑事とソ刑事は対照的に描かれていたのに、物語の終盤、ソ刑事が取り調べで「自白さえ取れればいい」、「暴力も辞さない」と変わっていったのだが

話が進むにつれ事件の猟奇性が増すので感情移入できてしまう

女子中学生(?)が被害者となる顛末が最も悲惨(この辺の描写も、暴力を直接映す訳ではないのに、すごい嫌な気持ちにさせられる)で、ソ刑事とこの女子中学生は聞き込みの過程で接点があったのだ(怪我した腰に絆創膏を貼ってあげていたり、トイレの下の男の噂話を聞いたり)

最初の容疑者であり知的障害者のクァンホが辿る結末も悲惨だ(列車に轢かれてしまう)
パク刑事たちは、クァンホが唯一の目撃者であるにも関わらず、肝心なところで「火が熱いのを知ってるか?」と話を聞き出せなかった
この前のシーン、チョ刑事は自業自得感が否めない。取り調べなど暴力を抑えきれず、ヤケクソで飲んだ先でも暴力を振るい、しっぺ返しで刺された錆びた釘がキッカケで破傷風となり足を切断する羽目になる(正に身から出た錆だ)

ラストシーン、時間が経ち営業マンとなったパク(ソン・ガンホ)が事件現場に戻り田んぼの脇の溝を覗き込んだ後で、小学生の女の子と会話をする

前にも覗き込んでいた人がいた
その人は「昔自分がしたことを思い出した」
女の子はその顔を「よくある顔」、「普通の顔」という

パクが画面越しに観客を見つめ返す
犯人が誰だか明らかにはならないが、犯人は今もどこかにいる
ハム

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