ボブおじさん

トラフィックのボブおじさんのレビュー・感想・評価

トラフィック(2000年製作の映画)
3.9
アメリカ社会に蔓延する麻薬コネクション(トラフィック=流通)と麻薬取締局との熾烈な闘いを、三つの物語を同時進行で描く、スティーヴン・ソダーバーグが監督した社会派サスペンス。

冒頭から麻薬の流通を巡るアメリカとメキシコにおける3つの場所での戦闘(争いと駆け引き)が、一切の説明なしで、畳み掛けるように描かれていく。

ひとつは麻薬の供給源であるメキシコでの戦闘。
ひとつは中産階級の住むアメリカ東部での戦闘。
もうひとつは、2つの国境を挟んだ町での戦闘。

麻薬に溺れる娘に苦悩する麻薬取締最高判事、麻薬王の夫が収監され苦境にある身重の妻、麻薬カルテルの一味を捜査する警官。3人の物語がリンクしながら同時進行し、見ごたえのある1本に仕上がっている。

無数の命と引き換えに大金が飛び交う麻薬取引きの入口から出口までがリアルに描かれているのは、脚本家のスティーヴン・ギャガンの綿密な調査を基にした脚本の賜物。未成年者の麻薬常習は彼自身の経験によるものだ。

脚本は、多くの人物が激しく出入りし、複雑に入り組んでるのだが、各シークエンスの画質と色味が変えられている独特な撮影技術により、次々と入れ替わる3つの世界を無理なく受け入れられる。アカデミー賞監督賞・脚色賞・編集賞を受賞したのも納得である。

マイケル・ダグラス/ドン・チードル/デニス・クエイド/キャサリン・ゼタ=ジョーンズら実力派キャスト陣が競演しているが、特に警官を演じたベニチオ・デル・トロが圧倒的な存在感を示して、アカデミー賞助演男優賞を受賞している。

この複雑な話をデジタル化する前の独特のフィルム映像技術で、わかりやすく理解できるように処理したのは、間違いなく撮影監督の〝ピーター・アンドリュース〟の功績。

え?聞いたことない人だって⁈
イヤイヤ皆さん良くご存知の〝あの人〟ですよ(^^)。


公開時に劇場で鑑賞した映画をDVDにて再視聴。