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車夫遊侠伝 喧嘩辰のIMAOのレビュー・感想・評価

車夫遊侠伝 喧嘩辰(1964年製作の映画)
4.0
加藤泰は後期作品を数本観ているだけで、この前『骨までしゃぶる』があまりにも良かったので、サブスクで代表作を観始めました。

明治末期。車屋の辰五郎が大阪で一旗あげようとやってくる。ある時、芸妓の喜美奴を客として乗せるが、お互い気の強い者同士、ちょっとした行き違いで辰五郎は喜美奴を川へ突き落としてしまう。ところが、その落ちてゆく喜美奴の姿を見た辰五郎は、こともあろうに彼女に惚れてしまうのだが…

コレ、相当変な話ですね(笑)最初は仲の悪かった二人が最後には結ばれる、という定番ながらもその過程が面白すぎる。良いところが沢山あるけど、最初の方で喜美奴をなぜ川に突き落としたのか?と、喜美奴の贔屓の親分に辰五郎が延々と説明するシーンはとても映画的。ここは辰五郎と親分が奥で話している手前で、喜美奴の顔をカメラが舐めている。奥の芝居と手前の喜美奴の顔の芝居を同時に見せる演出だが、その喜美奴の表情の面白いこと!後ろは雄弁に言葉で語るが、手前は一切言葉を話さずその表情のみの芝居で見せる。こういう演出、ホント洒落てるね。

脚本&助監督は、後に「トラック野郎」シリーズなどを手がける鈴木則文。この映画を観ると、いかに加藤泰の影響を受けたのかがわかる。何となくノリが一緒。後に「緋牡丹博徒」シリーズでブレイクする、富司純子もとても初々しい。あと、河原崎長一郎!子供の頃、吉祥寺でよく見かけたな〜^^
でも何といってもこの映画の魅力は桜町弘子が支えている、と思う。昔の映画を見るとハリウッドのクラシックでもそうだが、皆女性が強く魅力的だ。(ホークスの描く女性とか)もちろん、絶対的な地位は男性よりは低かったかもしれないが、彼女たちは皆自分の主張は主張として絶対譲らない。そこがとてもカッコよくて、同時に可愛らしくもある。
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