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サガン -悲しみよ こんにちは-のodyssのレビュー・感想・評価

3.0
【小説家は映画になり得るか?】

いつも思うのだが、小説家を映像化するのは難しい。

音楽家なら、本人が歌ったり演奏したりするシーン、或いは作曲家であってもその作品が実演されるシーンで、芸術家たる本人や、本人の生みだした作品が、観客から感覚的に捉えられる。
俳優や画家でも同じことが言える。

だけど、作家の場合、その作品を観客に感覚的に捉えさせることができない。仮に朗読シーンがあっても、それで作品の全体像をつかめるわけではないし、特に外国映画の場合、翻訳を通してだと原作の魅力が伝わりにくい。

この映画はサガンを扱った伝記映画だ。サガンと言えば十代でデビューして一世を風靡した作家。そういう意味での面白さはこの映画にたしかにある。だけど、それだけは作家としてのサガンの魅力を捉えたことにはならない。たまたま十代の娘が一夜のうちに有名になり、その重荷を背負って一生を生きたというだけのことにすぎない。

そこそこ面白い映画ではあったけれど、サガンの本質がこれで分かったのかと考えてみると、どうも分からない。そういう意味ではまさにサガンの小説名そのままに、「悲しみよ、こんにちは」と言いたくなる映画だし、また作品名をもじって「サガンはお好き?」と問い返したくなる映画ではあった。
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