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ライオンと呼ばれた男のHKのレビュー・感想・評価

ライオンと呼ばれた男(1988年製作の映画)
3.7
ジャン=ポール・ベルモンド傑作選グランド・フィナーレから未見の本作を観賞。
『男と女』『愛と哀しみのボレロ』のクロード・ルルーシュ脚本・監督の1988年の作品。
製作はルルーシュとベルモンドの連名。
音楽はフランシス・レイ。
あまり賞のイメージのないベルモンド(当時55歳)が、本作ではセザール賞の最優秀男優賞を受賞しています。

深い皺が刻まれたベルモンドの白髪交じりの髭面のアップが印象的ながら、前半は歌が延々と続いたり、回想か現在かわかりにくいシーンも多く、正直、少し眠気が。
しかしながら、後半になるとようやく飲み込みの悪い私も物語に引き込まれました。

3歳のとき母に捨てられ、サーカスの一座で育った主人公は波乱万丈の末に実業家として大成功を収め富豪になりますが、ある日会社も家族も全てを捨てて消息を絶ちます・・・
主人公がベルモンド本人と重なるイメージもあり、昔からのファンにとっては円熟したベルモンドをじっくりと堪能できる味わい深い作品です。

回想シーンでは主人公の顔つきが幼い頃から成長するにつれだんだんベルモンドに似てくるので上手いなと思っていたら20歳の頃はベルモンド本人の息子が演じていたようです。
ついでに言うと、主人公を慕う若者役の俳優の顔つきも少しベルモンドに似ていたせいで、序盤は主人公の若き日の回想と勘違いして混乱してしまいました。

原題は“Itineraire D'un Enfant Gate”(甘やかされて育った子供の旅路)
劇中で主人公の娘が執筆した本のタイトルでもあり、その意味を考えさせられます。
原題にこそライオンは出てきませんが、本作にはライオンをはじめいろいろな動物が出てくるし、ベルモンドのイメージも不思議とライオンと重なります。
思えばベルモンドの映画に動物は欠かせませんでした。

ラストシーン、ベルモンドの横にいるライオンのシッポがとても嬉しそうクルクルと動いていたのが印象的でした。
HK

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