B姐さん

忘れられた人々のB姐さんのネタバレレビュー・内容・結末

忘れられた人々(1950年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

他のひとが言うように、ブニュエル版『シティ・オブ・ゴッド』といった風で、メキシコ社会を声高に糾弾することなく、近代化された都市の隠された裏(影)の顔をシュールではなくリアリズムで淡々と描いている。だからここには、貧しい大人が貧しい子供を搾取する姿や、育児放棄をする母親が出てくるが、貧しさが生みだされる“メカニズム”そのものはない。そのあたりの切り取り方はドライでフラット、すごく突き放して演出されている。
盲目の老人は聖人としてではなく性欲を持った(普通の?)老人として存在し、父親を待つ子供にはいつまでたっても父親は現れない。都会に住む金持ちが貧しい少年(ペドロ)を買うシーンもその会話は聞こえず、未遂に終わる。

ブニュエル独特なかんじは、夢のシークエンスや窓越しの会話、卵をカメラに向かっていきなり投げつけるところや、少女がミルクで脚を洗うエロティックなショットなど、『スサーナ』や『エル』などこのあと撮る作品たちに反復されるイメージがすでにあるところだろう。夢のシークエンスで、ペドロ少年が自身のベッドの下に眉間を打ち抜かれたハイポの姿(ラストのハイポの姿)を見るというのがあるが、わけがわからなすぎて凄い。

ゴミ捨て場に無造作に捨てられる人間というのを撮る引きの仰角ショットがあり、同じコンポジションでやった映画を昔観た記憶があるのだが全然思い出せない。ソダーバーグだったと思うが、うーん。
とにかくラストの“朝明け”と思えない雲のかんじが暗澹たる未来にしか見えないので、これには自然とうむーとなる。現在のメキシコ社会の実情はよくわからないが。
B姐さん

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