ブニュエルのメキシコ時代の一本。リアリズム映画の最高峰といってもよいんではないか。
本作は、断ち切ることのできない悪の連鎖と負けの連鎖のオンパレード的な映画である。
1950年代のメキシコシティの貧しい集落で生活する人々と子供たちを描いているわけだが、とにかくブニュエルは容赦ない。甘ったるいラストは本作にはない。救いの神などいないんだよ!という映画である。
感化院を脱走した主人公の少年、ハイボとその仲間たちの悪事の数々がまずエグい。盲目の大道芸人や両足のないダルマ人間を容赦なく暴行する。
あげくは、ハイボが、自分を密告した少年を殺してしまう。
また、母親に冷たくされて過ごしている仲間の少年、ペドロに、ハイボは、自分のやった殺人を他人には言うなと圧力をかける。
ある日、ペドロがいない間に、ハイボは、ペドロの母親の足に欲情して、ペドロの母親とセックスしてしまう。
そんなことも知らずにペドロは、母親の愛を得るために真面目に働こうとするのだが、、、。
その母親は、自分の子供であるペドロには、ハイボがおかした罪を、ペドロがやったんだろうと疑い、真面目になろうとしていたペドロに、ますます冷たくあたり、あげくは、感化院にペドロを預けてしまう。
そして、どうなるかは、ここには書かない。
とにかく救いようがない。
本作には、後年の傑作『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』のような、コメディ要素は一切ないわけだが、ひとつ、所謂、みなさんが思うブニュエル的描写といえば、ペドロが見る悪夢の描写とラストに、ある種のブニュエル的なシュールなエッセンスを感じとることができる。
また、本作には、鶏が重要なアイテムとして何度も出てくるわけだが、そこには、キリスト教的な匂いを感じとることもできる。
ブニュエル作品を見る時には、キリスト教の知識を持ち合わせていると、楽しみ方が倍増するだろう。私は勉強不足なので、そのあたりも勉強しなければなと思ったわ。
本作は、メキシコ時代のブニュエルの傑作の一本であるが、後味は、最高に悪いです。w