Eike

ダークシティのEikeのレビュー・感想・評価

ダークシティ(1998年製作の映画)
4.2
エンタティメントとしての「良い映画」とは?「面白い映画」とはどういう作品でしょうか?

上映時間の間だけでも私達を全く別の世界に連れて行ってくれることができるだけのポテンシャルを備えた作品というのは一つの基準ではないかと思います。
私にとって本作はそんな一本であります。

物語はK・サザーランド演じるシュレイバー博士のモノローグで始まり、あっさりとエイリアンの侵略テーマであるとネタをばらしております。
安ホテルの一室で目覚めたジョン・マードック(R・シューウェル)が失われた記憶を辿っていくミステリーとして始まる物語は彼の美しい妻(J・コネリー)そしてジョンが絡んでいると思われる娼婦惨殺事件を追う刑事(W・ハート)を巻き込んで迷宮に彷徨うことに。

なぜマードックは記憶を無くしているのか?
なぜシュライバー博士だけでなく黒尽くめの「異邦人たち」までがマードックを追うのか?
そして何よりも、闇に閉ざされたこの街に朝日が訪れることがないのはなぜなのか?

徹底した美術・セット・特殊効果のおかげで、「ある世界」が完全に作り出されているのが今作の最大の魅力だと思います。
すぐれた映像美術と技術、それらと想像力を駆使した「壮大なほら話」が融合した時、大胆で娯楽性に富んだ野心作が生まれました。
暗い画面、どこか箱庭のような街の風景の違和感などプロダクションデザインの質の高さはやはりアメリカ映画ならではでしょう。
回想シーンとShell Beachのシーン以外は全てスタジオのセットで作られていて濃厚な閉塞感があるのですが本作においてはそれが大きな意味を持っていることはご覧になられた方ならお分かりでしょう。
物語の後半、街の存在に関して常識が崩れ去った後に新たな世界が我々観客の目の前で再構築されていくのを目撃するのは実にスリリングな経験であります。
本作は1998年の公開作ですが、撮影時に使用されたセットが翌年公開された「マトリックス」(もちろん第一作)に流用されているんですよね。そういえば暗色系のトーンやどこか虚飾めいた雰囲気が共通している気もしますね。

好き嫌いの別れる作品かもしれませんが、どうせ「ほら話」ならたまにはこれくらい大胆に冒険する気概のある作品を見せてもらいたいものです。
トレバー・ジョーンズの音楽も上出来で、よくTVでも使用されてますよね。
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