hari

パッチ・アダムス トゥルー・ストーリーのhariのネタバレレビュー・内容・結末

-

このレビューはネタバレを含みます

名作と名高いけれど自分はあまり好きではなかった。

パッチが患者と触れ合って笑顔にさせるシーンはすごく好きだし、それ自体はいいことだと思うんだけど、でも、まだ医者としての学びが浅い段階で患者と接触していいのかな?
今回は大丈夫だったけど、どれほど心に愛情や理想があっても、知識不足での行動は人を傷つけてしまうおそれがあるのに。安静にした方がいい患者や、興奮状態になると危険な患者、容態や精神状態によっては患者の命を危険にさらしそうなのに、そのへんを気にかけている描写が足りなくて心配になった。

理想主義者にありがちなように、パッチも理想が現実に先行しすぎている。決められた手順を守らず(3年になる前に患者と接触する、無免許での医療行為、薬の窃盗など)、先人の注意喚起を無視して自己判断で動き、周りを巻き込み、自己満足と自己肯定感を得ている。
それにより救われた人がいるのも事実だし、それまでのような医師の在り方が正しいとは思わないけれど、でも、理想を実現するために一足飛びどころか百足くらい飛びすぎていると思う。

無料の医院もいいけれど、無料で医療を受けられるような医院に来る人々は、必ずしも善良な社会的弱者だとは限らないし、医療が無料という意識の人が増えると医療崩壊に陥りそうで先行きが怖いし、そもそもどうやって無料の医療提供を維持するんだろうと気になってしまう。

カリン。まあいつかは誰かがそうなるだろう…という結末。これについてはパッチも悔いていたけれど、この件を踏まえて危険性が高いと思われる患者とどう向き合っていくのか掘り下げていくかと思えばそんなことはなくて残念だった。彼女の死は、放っておくとどこまでもふわふわ浮き上がってしまうパッチの理想を現実に繋ぎ止める楔のような出来事になるかと思ってたんだけどな。

最後のパッチの演説も自分には響かなかった。口の上手さと人望で乗り切ったな、という印象。

でもこれだけ気になる点があっても、なんだかんだ自分もパッチが嫌いにはなれない。自分が病気になったら近くにああいう人がいたらいいなと思うし、パッチのような人がいたら楽しいしやっぱり人として好きになると思う。でも人間性は信頼できるけど、パッチのやることすべては肯定できなくて、常に肝を冷やしながら見守ることになりそう。

でも診てもらうならミッチ。最初はプライド高い高慢な嫌なやつだなと思っていたけど、良き医者として人の命を救いたいという情熱は本物で、努力家で勉強熱心。その上、後半では医師としての能力と熱心さに加えて「心」も身につけつつある。
入学当初、パッチとは違う「理想の医者」像がミッチの中にあり、でもミッチはパッチに比べて現実的で、そんな医者になるためには諦めなければならないものがあった。けれど後半、当時諦めたものを改めて拾いに行き、自分とは違うパッチの在り方を認め、パッチから学ぼうとする。ミッチは本当に良い医者になるだろうな。

最後に、医者として人を救うのがパッチの理想だからこんなことを言うのはよろしくないんだろうけど、パッチのやり方なら医者でなくても良いのでは…と正直観ながら思ってしまった。治療は他の医者に任せて、病院を巡って人を笑わすコメディアンのような人になった方がよりたくさんの人を救えそう。セラピードッグみたいな。まあでも途中から無料医院の開設にシフトしていったので…。
hari

hari