皿鉢小鉢てんりしんり

女の座の皿鉢小鉢てんりしんりのレビュー・感想・評価

女の座(1962年製作の映画)
3.8
成瀬は交通事故がお好きなんだろうか?今作は車でなくて電車、あと自殺かもという示唆もちょっと混じったものだが。

一番年寄りの笠智衆が危篤で家族全員集合、だけど大したことありませんでした、というコメディを起点に始めておいて、終盤は一番若い高峰の子どもが列車に轢かれて、葬式で家族全員再集合というトラジディをもってくるというのが皮肉っぽくて良い。

自殺するのが、一見あまり描写エネルギーを割かれていなさそうな高峰の息子というのも、結構意表を突いた感じで面白かった。それでも必要な布石はちゃんと撮ってる(お母さんが再婚すれば勉強しろって言われなくなるもんね、なんてセリフがあったなとか)というのも抜け目なし。
冒頭、危篤おじいちゃんの顔を見にきた彼に、「顔色が悪いな、勉強もいいが身体を大事にしろよ」なんてことを笠智衆が言って、どっちが病人なんだがアハハ、といった趣きのコミカルなシーンがあるが、これがお話を最後まで知ってから見ると全く笑えない、という意地の悪さに惹かれる。

加東大介が宝田明に太平洋戦争の時の自慢話をしているのだが、そこに娘がやってきて宝田明に「英語教えて」と頼むというのが地味に痛烈で、こういうユーモアは楽しいものだ。