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キングコング対ゴジラのmidoredのレビュー・感想・評価

キングコング対ゴジラ(1962年製作の映画)
4.8
まずこのジャケットからして抱腹絶倒なんですが、中身も実に最高でした。

あらすじ:北海で目覚めたゴジラと南方から日本に拉致られたキングコングが富士山あたりで落ち合って存分にレスリングをする。どっちが勝つのか乞うご期待!

今回は街が廃墟になることはなく、怪獣の東西スター対決ということで、それこそずっとお祭り気分が漂っておりました。異国情緒あふれる南方の儀式やキングコングならではの見せ場など、見ていて楽しいシーンばかりの豪華な映画でした。猛烈サラリーマン風の高島忠夫が終始江戸っ子口調なのも好きです。

南の島で魔神として平和に暮らしていたキングコングを宣伝番組で使うために日本まで拉致するのは倫理的にどうなんだとは思いましたが、危ないけれども愛嬌のある巨大サルという感じで常に魅力的に描かれていて愛を感じました。

国会議事堂を椅子にしたり、ゴジラの攻撃にびっくりしたり。コングが巨大な風船で空中に吊り上げられるシーンはシュールかつファンタジックで意表をつかれました。ゴジラとの対決でも血を流すことなく最後にはちゃんと故郷に戻ります。

もちろん、とても怖い大元祖『ゴジラ』の監督が撮った作品なだけあり、一部満州引き上げを思わせる嫌なシーンや、これはどう考えても人間10人は死んでるよなと思わせる怖い場面もなどありましたが、今作のゴジラはもう原水爆の化身ではなくて大きめの台風ですね。「今は原子力の時代」と言うセリフからは被爆国として核の恐ろしさを世界に伝える事よりも原子力発電という「核の平和利用」へとシフトチェンジした日本の政治的背景がうかがえました。

それでも怪獣たちを滅ぼすべき敵ではなく、恐ろしい神として存在を受け入れながら畏れたり崇めたり鎮める対象として描くところがいかにもアニミズムの世界観です。そういえばモスラもインファント島の神様でした。

今作でも軍隊があれこれ珍作戦をひねり出していましたが、怒れる神にあたふたしている村人のように無力で良かったです。超巨大落とし穴に落ちたコングが無傷で出てくる場面はなぜかコングの応援団みたいな気持ちで嬉しくなりました。そんなんで魔神がやられるわけがないのです。こういう、滅多に人間が退治できないところなども神様っぽいのですね。芹沢博士は自ら供物になることでやっと鎮めていました。怪獣映画が独特なのはそのせいかなと。

ハリウッドリメイクのゴジラは見たことがないので何とも言えませんが、ゴジラを単なる強くてかっこいいモンスターとして活躍させたらつまらなくなりそうです。

実は今まで『モスラ』以外の怪獣映画はパシリム、シンゴジふくめてあまり面白いと思ったことがなく、映画館でも爆睡こいた思い出しかなかったので、ここで再度じっくり大元祖『ゴジラ』から2作見て色々認識が改まったのは良かった。こんなに面白いジャンルだったのかと驚きました。

特撮愛に満ちた『あひるお姉さん』を見た影響も大きいかもしれません。

毎回ゲーセン「エリナ」が壊れていたのも大事なお約束だったんだなと、ゴジラとコングにぐしゃっとされる安土城のシーンを楽しみながら思いました。崩れながらも本物っぽさを維持する模型制作技術は相当なものですよね。やはりB級作品も見ておくものだなと思います。
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