垂直落下式サミング

13日の金曜日PART8/ジェイソンN.Y.への垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.2
クリスタルレイクに沈んでいるはずのジェイソンが例によって復活し、学生をのせて都市部の研修旅行にむかう客船に乗り込んで、若者や乗組員を惨殺し、辿り着いたニューヨークでも生き残りを執拗に追いまわす。人気ホラーシリーズの第八作目。
小さな世界に収まっていた物語の続編は、どこかのタイミングで都会へ出ていく感じになるが、ジェイソンも八作続いてきて、ついに他所にお出かけ。
客船に乗り込んで故郷クリスタルレイクを後にし、船内の人を殺し回りながら船旅を楽しむジェイソン、ついにやって来ましたニューヨーク。
タイムズスクエアのまばゆい光に、さすがのジェイソンも田舎者丸出しでプチキョドり。強盗強姦をはたらく最低の暴漢には容赦なく鉄槌を下し、面倒なストリートギャングは素顔で追い払い、飲食店の用心棒など軽々と投げ飛ばしてしまう。そんなこんなで、資本主義社会の象徴のような街に暴力の化身が降り立つわけだ。
本作のマカラロック先生は、シリーズ屈指の嫌なやつで常に事態を悪化させる偉そうなくそ老害ジジイなのだが、それにしてはコイツの最後が呆気なさすぎるので爽快感に乏しい。
その逆に、本作のギタリストの女の子や映画業界志望の男の子などは、各々を掘り下げればほろ苦い青春群像になりそうな愛おしさ全快にもかかわらず早々に惨殺されてしまうため、引き裂かれるような思いで鑑賞し終えることになった。
黒人青年とボクシングをする場面は、一分近くもノーガードで相手に打たせてあげていて、その間、なぜかずっと無音。素人格闘技の無観客試合みたいで不憫。この感じが犠牲者の人数分あるためなかなかに気まずい。過去作で犠牲となる若者は死んだってどうでもいいようなやつばかりだったのに…。
スラッシャーは、人間を描く力がないのではなくて、これから死ぬ人のことを人間として描いてはいけない。かわいそうだから。全員いけ好かないやつなくらいでちょうどいいのである。