ナンデヤネン

座頭市牢破りのナンデヤネンのレビュー・感想・評価

座頭市牢破り(1967年製作の映画)
3.8
オープニングクレジットを見ると、勝プロ第一回作品を祝うかのように知名なスタッフ・キャストが名を連ねている。まず目に入ったのが名カメラマン宮川一夫。脚本が中島丈博。現在はご高齢で一線を引いておられると想うが映画では「おこげ」や「壬生義士伝」、TVドラマでは大河ドラマの「元禄擾乱」や「失楽園」、昼ドラの話題作「牡丹と薔薇」など数多く手がけている。そして若かりし時の細川俊之と藤岡琢也が出演している。細川俊之独特のセリフ回しは当時はまだ見られない。まだ無名だったと思うが、重要な役どころで出演している。
聞けば本作はシリーズ中異色の娯楽色控え目、シリアスな作調らしい。市がしでかした事で負の連鎖を招く。暴力がもたらす悲劇をこれでもかと見せつけている。暗い。暴力描写も他のシリーズ作品と比べると凄惨である。これは山本薩夫監督の左翼、反権力的な思想が強く反映されているからかも知れない。本作では、市と対極的な人物として大原秋穂を登場させている。百姓に熱心に農業指導して団結を促す。刀を持たず権力に対しては非暴力を貫いている。対して市は世の中に悪人がいる以上、帯刀するのは自分の身を守るための必要悪だとし、人を斬るのは仕方なしと言う。理想家と現実主義者、実社会においてどちらが正しいのか答えを出すのが難しい永遠のテーマである。
三國連太郎演じる朝五郎がなぜ人が変わってしまったのか経緯は描かれていない。が、それによって一度力を手に入れると人間の欲深さには底がない、手のひら返しに人は変わりうるものだというメッセージを強く感じることができた。案の定、朝五郎は最期、格好悪い死に様だった。
先述のように本作はシリーズ中異色作である。ダークサイド版座頭市というべきか。奇をてらったのかもしれないが本作は成功した方だと思う。評価高めです。
ナンデヤネン

ナンデヤネン