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悲しみは空の彼方にのくりふのレビュー・感想・評価

悲しみは空の彼方に(1959年製作の映画)
4.0
【模倣人生は続くよどこまでも】

サーク監督、ハリウッド最後の作品ですね。大ヒットしたそうですが、「泣ける映画」と受け取られたからでしょうか。実態はディスコミュニケーション上等の、けっこう冷笑的なお話でしたが。そもそもタイトル(原題Imitation of Life)からして「インチキ人生」、ですからね。

二時間超えは長いと感じました。長くなったのは、ラナ・ターナー演じるローラが、同じことを何度も繰り返すせいでしょう。

女優としての成功をキリなく求める彼女は、そろそろ引退か…そろそろ愛する人と落ち着くか…と迷っても、仕事が来た途端パブロフの犬。で、彼女を待つ男がまたねえ…やめときゃいいのに(笑)。そしてローラの娘がまた可哀想に…。

ということで、ローラの女優業とImitation of Lifeをかけているんですね。原作は女優ではないそうですが、狙って変えたのでしょう。娘にはとうとう「やめてよそんな○○!」とまで言われるようになってしまう(苦笑)。この辺のアイロニー!サーク味、健在です。

ローラは成功する前から、黒人の子連れメイドと同居することになり、女二人の奇妙な関係が物語の柱にもなりますが、余裕もないのにメイドを受け入れることでこの、ファニタ・ムーア演じるアニーの異物感が極まっています。それが娘をも圧迫してゆく。

アニーは勤勉でよい母親ですが、ローラと別角度から鈍感なんですね。人種差別に悩む「白い肌の娘」サラ・ジェーンに対し、クリスチャンの彼女はあることしか言わない。それが納得できなくてサラは苦しんでいるのに…。

この二人の「難儀な母」物語としてとらえるのが、私にとっては本作の入口で、まずは面白いところでした。そこから幾つかの枝分かれがあるので、何度か反芻できる映画だと思います。

愛で解決できることって本当にあるの?と問いかけて終わってしまうところも悪くない。間に合わなかった愛に絶叫するサラ役スーザン・コーナーの、かすれゆく身悶えがやるせない。この役でゴールデングローブ助演女優賞を獲ったそうですね。

あ、かつてローラたちを助けてくれた牛乳配達のおじさんが、『女はそれを我慢できない』でジェーン・マンスフィールドの乳に目を奪われて商品の乳を煮立てちゃうおじさんと同じ人でした(笑)。

それで言うと、ファニタさんも同映画でファンキーに踊る黒人メイドをやっていましたね。そちらは底抜けに明るい役で、すごいギャップです。

<2014.5.15記>
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