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悲しみは空の彼方にの皿鉢小鉢てんりしんりのレビュー・感想・評価

悲しみは空の彼方に(1959年製作の映画)
3.9
1959年。ハリウッド流メロドラマが“成熟”をすっかり通り越して“爛熟”に差し掛かっている様子が伺える。
オープニングからしてダイアモンドが降ってくる映像に甘ったるいラブソング……テクニカラーと口走りたくなるが実はイーストマンカラーらしい、が50年代ハリウッドのこれでもかという人工色彩設計世界が覗けるという点では本質的に違いはなさそう。
エモーショナルに演技をする役者の動きをカメラが追い、ドラマチックな影が顔面に差す、この過剰さがあまりにも美しい。よくできた映画というのは、“ただそれだけのこと”をやってるのが強烈な魅力になってしまうから不思議でならない……
アニーとサラ・ジェーンの別れのシーン、他人が楽屋に入ってきた瞬間にサッと黒人メイドのフリをしなければいけないのがあまりにも悲しい……
サラが1番求めていた“白人側”の人間として扱われるシーンであるだけに、ほんとにいたたまれない……アニーもスージーも親の顔がまともに見られない時は鏡に向かっていく。鏡の前に立つシーンが、自分を見つめられないことの描写であるというのがなんとも……
びっくりするぐらい人がたくさんいるビーチのシーンから始まり、びっくりするぐらい人がたくさんいる葬式のシーンで終わる。こんなメロドラマでも贅沢にエキストラが使えるのが50年代というものなんでしょうか。