しおん

デザート・フラワーのしおんのネタバレレビュー・内容・結末

デザート・フラワー(2009年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

たまたま見つけた映画で、どうしても内容が気になって視聴。
2時間ちょっとで長いかもしれないが、今のところ人類に観てほしい映画のナンバーワンになった。
私はここでFGMという言葉を使いたくない。軽率に略語にし、あやふやにしたくない。
この映画は、女性器切除されたヒロイン、ワリスの実話に基づく話だ。
女性器切除って、自分も女性でありながらどこをどう切除するのかとずっと分からず、勿論映画では「実物」を映るわけにもいかないので、映画を見終わったあとウィキペディアを舐めるように読んでいた。

ワリスの出身国はアフリカ・ソマリアと言う国。ウィキペディアによると、女性器切除には様々なタイプがあり、ソマリアと言う国ではとりわけ一番ひどいやり方をするとか。
映画にも途中でその話があったが、ワリスは、性器そのもの切除されただけでなく、まさにその「穴」が縫われたのだ。身が震えるような記述だった。(ウィキペディア繁体字版には、直接写真が掲載されていないものの、リンク先に実際の写真があり、恐る恐る見ていた)

しかし映画では、一番恐ろしく、かつ大事なシーンを最後に持っていたことで、ここまで印象を残してくれたのだろう。
ワリスの力強いスピーチ、砂漠をひとりで歩く景色、壮大な音楽とともに終わるエンディングは、非常に素晴らしかった。
ストーリーはほぼ回想と言う形で進行し、とにかくワリスの勇気に感動させられた。村を離れるのは、それこそ決死な思いでした決断だろう。しかし、もしかして映画の終盤でヒロインが言うように、自分の人生は3歳の時に大きく変わったというより、その時で一度死んでは生き返ったようにも思う。実際、こんな陋習には死者が出ることもしばしばだそう。

非常に重いテーマだが、たまたまワリスを「拾い」、のちに家族同然の親友になったマリリンがいてくれたこそ、少し救われる気分になる。
マリリン自身が人生うまくいっていない中、本気でワリスを助け、彼女の成功を喜ぶところが本当にとても素敵な人なので、実際本当のワリスにはこんな人がそばにいてくれたのだろうか。
実話に基づく話だが、偽装結婚の話はさすがにドラマチック化させるためだけでしょうね……笑
下宿先の大家さん、雑用係の気味悪いが根はそこまで悪くないニール、とにかく人を怒鳴る癖のあるマネージャー、カメラマンなどなど、皆濃くて良いキャラ。

英語がほぼ喋れないからようやく一人前のスーパーモデルになるまで、ワリスを演じたリヤも演技力抜群で、微かに目や表情からでも十分ワリスの気持ちが伝わった。特に、モデルとして自信を持ち始めた時の輝かしい表情が、本当にとてもとても美しかった。勿論、リヤ本人もスーパーモデルという言葉に相応しすぎるほどの美人でスタイルもいい。
ただし、元々エチオピア出身の彼女は、本当にソマリア語を喋っていたのかちょっと気になって仕方ない笑
そして、終盤に子供のワリスを演じたあの子がすごい形相で泣いて暴れていたところもあまりにもリアルすぎて、本当に大丈夫なのかと心臓ぱくぱくになっていた……

ワリスご本人の自伝による映画なので、本もぜひ読んでみたくなった、そんな映画だった。
ぜひご覧あれ。
しおん

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