ダンクシー

ゼイリブのダンクシーのレビュー・感想・評価

ゼイリブ(1988年製作の映画)
4.9
「彼らの目的はみんなの意識を無くすことです。無我の状態へ誘いこみ、ちがう人間になったと思いこませるのです。欲に目のくらんだ人間にします」

B級界のレジェンド、ジョン・カーペンター。やっぱり俺はこの監督が大好きだ。勿論、他にも尊敬してる監督、好きな監督、憧れてる監督はいる。でも、カーペンターはその人らとは別のベクトルの憧れがある。こういう映画を撮ってみたいな〜って気持ちになる事はよくあるけど、それとは違う次元というか。日本で言うと北野武がまさにそうなのだが、絶対その人にしか撮れない独自性・唯一性・作家性に憧れるし、そこを目ざしてるからこその眼差し。そう、俺はジョン・カーペンターや北野武になりたいのだ…。最早、なりたいの次元。彼らの映画にはあまりにも好きなところが多すぎるし、観終わる度に毎回なりてぇ〜って悶絶してしまう。

「許可証はあるか?」
「あるさ」

B級は限られた少ない予算で作らないといけないので、壮大でスケールのデカいストーリーを描くのは向いていなく(当然)、例えばワンシチュエーションとかあまり規模の大きくないストーリーでいかに面白くするのかを競うものである。そんな中、ゼイリブはなんと地球が宇宙人に支配されているというトンデモSFだ!!
…しかし安心して欲しい、ちゃんと人類の存亡をかけて宇宙人と全面戦争するみたいなハデな内容ではなく、気づかぬうちに宇宙人が紛れ込み洗脳されているという話。"遊星からの物体X"とはまた少し違う角度のSFですね。ゼイリブというタイトルがまんますぎますが、これくらい直球でもいいのかもね。
協会がバレて襲撃されて貧困層の居住区がめちゃくちゃに破壊されるシーンから一気にガラッと空気が変わったし。あそこの緊張感といい、不意の爆発といい、ほんとにカーペンターは撮るのがうまい。そして自身で劇中の音楽を作るカーペンター。彼らしいメロディーはたまらない。

特筆すべきは、この作品の宇宙人たちは直接人類に危害を加えていない。武力を行使せず、ただただ無意識下から洗脳していってるのだ。これは、マスメディアに対する皮肉だ。マスコミによる洗脳に警笛を鳴らしている。大統領だってニュース番組のキャスターだって宇宙人だったのもそういう事だ。表上の情報だけで全てを判断するな、綺麗事に騙されるなってことですよ。宇宙人の存在に全く気づかない人々=現実世界の人々ってこと。アホなんですよ、と。そしてこの作品が制作された年代は大企業が台頭し政府にまで介入していた時代らしい。だからマスメディアを利用して人類を洗脳して乗っ取ろうとしていた宇宙人は大企業の暗喩だろう。序盤の荒廃した町と日雇い労働者達の描写からも、当時のアメリカの現状をリアルに描いているたのが分かる。
まぁ、確かによく考えたら人類と戦争して侵略するよりもじっくりと気づかれないように洗脳しながら支配していく方が絶対被害も少ないし確実的な方法だよねぇ。現実に対するアイロニーや、低予算でも撮れる思いついたもん勝ちの賢いアイデア、この時点でいかにこの作品が素晴らしいかが分かる。発想の勝利でしかない。

そして、サングラスをかけると真実が見えるって設定もめちゃくちゃいいよな〜。カラーとモノクロで映像の差別化を図れるのもスゲェし。"服従しろ"、"眠っていろ"、"結婚して出産しろ"、"疑うな"という洗脳メッセージの数々。これもサブリミナル効果をうまく表現できている。

「どっちか選ぶんだ。あの眼鏡をかけるか、残飯を食うかだ」

約6分にも渡るサングラスをかけるかかけないかだけの大喧嘩も、最高すぎた。
でも、確かにあの喧嘩には意味がある。今の日本でさえ、しょうもないトレンド(テレビ局が流行らせたいだけのもの)を永遠と垂れ流しては報道すべきニュースを報道せず、どうでもいい不祥事を意味もないのに永遠と議論する…。ずっとマスコミという宇宙人に我々は支配されているんだよ!!目覚めろってのは我々に対する警告だ。サングラスをとるかとらないか、決めろと。俺は迷わずサングラスをとるぜ!!オマエタチはどうすんだ!?

それに、「Hey, What's wrong, baby?」ラストも最高すぎだろwwwww騎乗位とか予測できんわ。完璧すね
ダンクシー

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