柏エシディシ

ゼイリブの柏エシディシのレビュー・感想・評価

ゼイリブ(1988年製作の映画)
4.0
30周年記念デジタルリマスター版をスクリーンで観れる幸福。
しかし、なんで今更「ゼイリブ」なのか。結論、今だからこその「ゼイリブ」なのだ。
「これはお前の神だ」と書かれた札束に、「隷従せよ」「目覚めるな」「TVを観ろ」「産み増やせ」「消費せよ」と無意識化にメッセージを発し続ける広告に印刷物、、。
SF奇譚を通じて描かれる肥大した資本主義社会への警鐘。
残念ながら、30年経っても有意性は変わらないどころか、より強まっている様に思う。
中産階級を巧みに取り込み、貧困層との格差は広がるばかり。まるで某国の大統領のよう。カーペンターによる預言。今そこにある危機。
ある種のポップさ(侵略者の奇妙に愛嬌のある不気味な造型が本作の成功の多くを担っている。のちのカーペンター夫人の素晴らしいお仕事)とお得意の西部劇マナーの作劇で巧みに社会批評を展開するカーペンターの手腕はマーベラス。

そしてやはりゼイリブと言えば、ロディパイパーとキースディヴィッドの路地裏の格闘シークエンス。
まぁ、今の目で見るとなんとも洗練されていない野暮ったいシーンに見えなくもないですが、結構重要!
まぁ、人が見たくもない知りたくもない真実に目覚める時、どこか滑稽で痛みを伴うものじゃないのか、と。
そして、肉体ひとつを頼りに生きて来たふたりの男の憤りと葛藤、そして心の底にある信頼が透けてみえるブロマンス的なラブシーンと理解出来なくもなく。
カーペンター師匠の奥深い狙いがそこにはあるんですよ、きっと!
、、、ま、本当はWWFのファンだった師匠がロディのプロレスを演出したかっただけだったというところでしょうけれどw
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