柏エシディシ

Playbackの柏エシディシのレビュー・感想・評価

Playback(2012年製作の映画)
4.0
三宅唱監督特集@キネマ旬報シアターにて。
三宅唱監督の初期作品という事で、何の前知識も無く見始めてみたら、思った以上に喰らってしまった。
落ち目の俳優が友人の結婚式に合わせて帰郷する。というお話ではあるが、序盤からうっすらと漂う不穏というか不思議な空気感、その"理由"が明確になる中盤には驚いたが、結局、何が現実で何処からが夢であったのか語り切れない、どちらも今際の際で見た虚な幻影なのかもと思わせられる。
「お前もついにこっち側の人間になったか」
彼岸へ越える道具というか乗り物?がスケボーというのが、何とも良い。
確かにあの滑空する様なスピード感と地面を引きずる独特な音には、そんな"まじない"めいた雰囲気と、同時にノスタルジーを沸き起こす何かがある。
本作自体が東日本の震災前後に製作されている事情も相まって、失ってしまったものへの哀悼も強く感じさせる。
夢の様な映画が好きだ。
それは夢そのものというより、寝ている時に観る夢の様な体験をさせてくれる映画の事なのだが、この映画はまさにそんな映画だった。
エンドロールの謝辞に、濱口竜介監督の名前を(たぶん)見つけた。まさにキネ旬シアターで、特集上映が並行して開催されていて、渋川清彦、河井青葉という濱口作品常連キャストも出演して、そのシンクロ具合もこのタイミングでの鑑賞は味わい深さを増した。今、邦画界で強い存在感を感じさせる2人の監督の10年ほど前の交錯。
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