これまでヒッチコック作品には、話の構造や撮影技法、主人公の性格などから、これ見よがしなナルシズムを感じていたので、優生思想に対する否定をかなり真面目にぶっ込んできてちょっと意外だった。
特に「私もそれを思う事はあるが実行はしない。それは人の心があり、社会の事を思うからだ」という趣旨のセリフや
「お前の間違えは社会が示すだろう」というラストから、かなり熱い怒りや危機感の様なものを感じずにはいられなかった。
ナチス崩壊後数年しか経っていない社会のはずなのだが、やはり現代同様、優生思想を支持する層は一定数居たんだろうなという事を思わせる。(実際の事件は1920年代とのこと)
もちろんヒッチコックらしい面白撮影や、サスペンス的な推理劇、会話の節々から様々な結末を連想させ引き込ませる技は光るが
それ以上に社会派の色合いが強く、なかなか特徴的な作品になっていると思う。