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ブレスレスのarchのレビュー・感想・評価

ブレスレス(1983年製作の映画)
4.3
最高。
リチャード・ギア演じるジェスの突き抜けるほどの陽性が、一進一退の追跡劇に刹那的な人生観と短絡的だからこそに惹かれ迸る「俺たちに明日はない」型の男女逃走劇に、推進力を与えていて、最後の最後まで痛快極まりない作品だった。

シンプルな構造で、モニカを(物理的にも恋愛的にも)追うジェス、それを追う警察、追う追われ二次元的な構造で話が展開されていく。一々新聞で状況を把握して、それ以外の時間はモニカのケツを追っている前半は、無駄な音楽やダンスシーンの数々等含めて明らかに無駄な場面ばかりだが、後半になるにつれ、ジェスという男の現実逃避し、物理的に逃げて、All or Nothingで生きてきた人生観に理解する手助けになっていく。
ジェスの現実逃避とモニカへの愛が一致していく。しかし、ジェスに追いかけられ、それを受け入れることは、背後にいる警察にも追われることでもある。
思えば、ジェスの警官殺しも不運の結果と言えるはずで、その別離する他ない状況設定は、途端に心迫るものになる。

彼の楽観的ながらも、現実にストレスをかけられている心境が、意外に深みのあるものとして伝わりはじめ、ラストのジェリー・リー・ルイスの「ブレスレス」に辿り着く。
案外本作は、ジェスに対して辛辣だと思う。この場面でジェスは最後のダンスシーンを魅せるが、曲を流しておきながら、途中て曲を止めてアカペラにし、ダンスを剽軽な動きに見せるのは、この映画の<演出>だ。
その「この滑稽な男の勇姿を見よ」というスタンスの演出の数々が、この話にならないような恋愛逃走劇に唯一無二の情感を与えていると思う。

異様に赤いラスベガス、各場面のビビットな照明遣いに、セクシーなシーンの的確なショットの数々。
とても好きな映画でした。
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