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プロフェシー/恐怖の予言のEikeのレビュー・感想・評価

プロフェシー/恐怖の予言(1979年製作の映画)
3.2
闇の中にこだまする荒い息遣いと移動する光の群れ。
高まる犬たちの興奮した鳴き声で幕を開ける実に映画らしさが漂う1979年製作のSFモンスターホラー映画。

日本での公開はえらく地味な扱いだった記憶がありますが本国では超B級の怪作としてカルト的に扱われている作品。
それを証明するかのように(?)本作は御大スティーブン・キングのお気に入りの一本だそうです。

日本の水俣での公害事例をベースにアメリカ東海岸の森林地帯、メイン州の奥地で静かに進行する環境破壊を題材にした物語。
そこに先住民族の伝承上の怪物「カターディン」の存在を織り込んだ脚本は元祖オーメンのDavid Seltzer。
ゲテモノ怪獣ホラーと見られても仕方のない作品ですが、タリア・シャイア扮するヒロイン、マギー(妊娠中)の不安と夫である医師、ロブ(ロバート・フォックスワース)の葛藤を中心に据えてシリアスなドラマとしての体裁は捨てていない辺りは結構骨太な雰囲気でありあます。
製紙産業の振興によって人知れず進行する環境破壊の告発をネィティブアメリカンのコミュニティと工場側との対立軸で描き出すあたりもあくまで「ドラマ」としてのスタイルは捨てずただの見世物に終わらせないフランケンハイマー監督の気概を感じます。
ただ、本作に取り掛かった当時、フランケンハイマー監督は長年の不摂生が祟って体調をかなり悪くしていたそうで、本作に同監督らしい「キレ」が不足して見えるのはその影響があるのかもしれません。

79年の作品ですからモンスターは着ぐるみや特殊メイクなどで作り上げられております。
そのため技術的な制限も大きく見せ方に工夫を要した訳で、その辺りも今の時点で本作を見て楽しむべき点でもあります。

濃厚な森林地帯の気配を強調する空撮シーンの多用もあってロケの効果も良く出ており、本格モンスターホラーとしてのお膳立ては良く整えられております。
現在の観点からすると地味に映りますが結構残虐なシーンも盛り込まれてます(中でもあの寝袋のシーンは人気らしい)。
因みに本作は実際にはカナダのブリティッシュ・コロンビアで撮影されているそうで、カナダ産アメリカ映画の走りとも言える作品だったそうです。

1979年公開ということでほぼ同時期にALIENの第一作が公開されたわけであります。
最新のテクノロジーを投入してそれまで誰も見たことのない「ビジュアル」を大々的にフィーチャーする時代が到来した訳で、本作のいかにもクラシックなB級モンスター映画らしい語り口とのスタイルの違いはとても大きい。
ジャンル系の作品の流れに大きな変化の波が訪れていたことを感じさせる作品と言えましょう。
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