邦画青春コメディのマスターピース。
いま観るとやはり演出はもっさりしておりあくまで平成初期のレトロ作品といった印象。ただ、なんとなくこの時代のトレンディ感は嫌いになれないというか心地よくすらある。
まったくリアル世代じゃないので、根明な空気感に対しての羨望が少しあるのかもしれない。バブルの名残なのか映像のグレーディングがなんか不必要にキラキラしており、終始明るい雰囲気が損なわれないので安心して観ることができます。
あとはやっぱり観てて感じたのは、傑作『ウォーターボーイズ』や『スウィングガールズ』あたりへの影響。花形ジャンルではない部活にも、当然カタルシスが存在する。それを鑑賞者が共有できたときの高揚感は、未知を知れたお得感と共に一味ちがうものとなります。
そして「あまり馴染みのない世界をポップに描く」といった意味では『ハッピーフライト』や『WOOD JOB!』などの職業コメディへも間接的に繋がっているとも感じます。矢口史靖監督の得意技として継承され確立された感のあるこれ系のジャンルは、ファミリームービーとしても今や邦画に不可欠なものですよね。そしてやはり今作はその源流です。
尚、竹中直人さんはまあ知ってましたが、柄本明さんが優しいコメディに欠かせない存在であるということは目から鱗でした。多分もうここ30年くらいは優しい役であってもどこか毒っけが漂ってしまう柄本さんですが、柔和さだけを感じることができるのはこの時期がギリギリ最後かもしれません。