暮色涼風

スライディング・ドアの暮色涼風のレビュー・感想・評価

スライディング・ドア(1997年製作の映画)
4.0
『ふたりのベロニカ』『Love Letter』と一緒に、「偶然と必然」がテーマの大学の講義で一例として紹介された時にちょろっとだけ観た映画を、改めて観直した。

電車に乗れた場合と乗れなかった場合、その二つのパラレルワールドで変わっていく主人公の人間関係や生活環境を同時進行で観せる演出には、いくつもの工夫が施されている。

まず、二つの世界を交互に見せても観客が混乱しないで観れるように、主人公が怪我をして顔に絆創膏を貼ったり、髪型を変えたりするなど、容姿を自然に変えて区別することでテンポの良い編集ができている。

更に、二つの世界をリンクさせて見せるモンタージュ技法の多用が面白い。Aの世界を映していたかと思うと、カットは変わらないままその場面にBの世界の人々が登場し、ワンカットの中でAの世界からBの世界に場面転換をしているという手法だが、言葉で説明するの難しいなこれ。

「偶然」の多発、その積み重ねが、「必然」の可能性を高める。
すなわち、ジェームズとの出会い方は「偶然」であるが、出会うことは「必然」か。
暮色涼風

暮色涼風