ミシンそば

トラウマ/鮮血の叫びのミシンそばのレビュー・感想・評価

トラウマ/鮮血の叫び(1992年製作の映画)
3.6
ああ、タイトルのトラウマってそう言う……。
流れは大分緩慢ではあるが、最後まで観てそう言う感想に行き着いた、月初ごろに密林から届いたホラー・マニアックスの新録吹き替え付きBlu-rayで鑑賞。

アルジェントが初めてアメリカ資本で撮った作品だが、イタリア時代の彼の作品をアルバート・ブロッコリが作った007だとしたら本作は「ネバーセイ・ネバーアゲイン」だ。
良くも悪くも、巨大な資本によってすべてが変わってしまっている。
キャリア初期の名作をなぞるような――特に「サスペリアPART2」こと「プロフォンド・ロッソ」をなぞること露骨(殺人描写や犯人の隠し方、もっと言えば主演俳優がめっちゃデヴィッド・ヘミングスに似ていたとことか特に)。
ただしそれらの作品のような上手さは、やはり90年代のアルジェントにはない。

とは言え初主演を務める二女のアーシア・アルジェントを“魅せる”映画としては……って言おうとも思ったが、正直そっちとしてもどうなんだろう。
実父の演出下のもと、彼女も相当に体を張っているが殺人者が首を刎ねるために使う凶器の珍妙さやら、ミステリーとして初期作品と比して取っ散らかってる演出にばっかり目が行く
(凶器に関しちゃ、最初これどうやって人殺してるんだ?って思ったが、近所の眼鏡ガキがどんなか実践してくれる(もちろんそのガキは死なないがちょっとだけヒヤヒヤした))。
そして、首が飛んでも数秒は生きてるキャラが数人いて、正直そこはシュールだとも思った。

でも最初に言ったように、表題の意味が最後の最後で分かるところと、過去作観てればある程度予想はできる結末なのに、それでもネタバレ踏んでなければ今でも騙されるミステリーとしての質の高さは感じられた。