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死の十字路のsayuriasamaのレビュー・感想・評価

死の十字路(1956年製作の映画)
4.9
人々に降りかかる、少しの偶然から起こるサスペンスフルな悲劇

シネマヴェーラ渋谷の企画よりその2

いやー見応えある作品でした。本当に濃い!満足感が押し寄せてきます。白黒映画だけど。

ストーリー:商社社長の伊勢(三國連太郎)は妻友子(山岡久乃)が宗教活動に熱心になることを快く思わず、愛人の晴美(新珠三千代)の元に足しげく通っていた。ある日、晴美の家に友子が押し掛けて殺そうとする。伊勢は必死に友子に抵抗した弾みで、彼女を殺してしまう...
時を同じくして、あるスナックでは真下(三島耕)と相馬良介(大坂志郎)が、真下と相馬の妹・芳江(芦川いづみ)との結婚について言い争っていた。そして、真下が相馬を殴った弾みで相馬は頭を打ち、致命傷を負ったまま街へ消えていった...

伊勢は妻の死体を、数日後に注水の始まるダム湖に捨てることにする。山間部へと急ぐ中、交差点で事故を起こしてしまう。事故の示談の最中、駐車してある伊勢の車に良介は乗り込んでしまい、車内で息絶える。ここにきて、交わるはずのない事件が絡み合うこととなる...

ストーリーを全部説明すると面白味がなくなるのでこのくらいで。
ともかく、サスペンスフルでドキドキしっぱなしでした。

まず、三國&新珠の不倫カップルの方は、本妻を思いがけない方法で消すことはできたものの、いつばれるのか不安で仕方がないサスペンス。
三島&芦川の若いカップルは兄が急に消えて行方不明になってしまい心配になってしまうサスペンス。
そして、この謎に取り組む探偵は「相馬良介にソックリ」なのがうりな南重吉こと、大坂志郎の2役。丹念な捜査にカンの鋭さがよく、真実に近づく度ドキドキ!

俳優陣は豪華で(実は観てからきがついた)三國連太郎はセクシーで厚みがありながら警察には外面がいい感じ、憎々しかったなあ。
新珠三千代はもーファッションが洋装和装ともオシャレだったなあ。キレイ、可憐、儚げ。あんな秘書なら誰しも良からぬことが頭をよぎります。
芦川いづみはキュートなラジオドラマ俳優でしたね。でも自分はチョイ役の足の不自由な娼婦、東谷暎子のほうが好みだった...健気さがかわいそう。

もちろん、三國連太郎の迫力は当たり前のように素晴らしいのですが、驚いたのは大坂志郎のやけに女癖の悪い探偵ぶり(笑)後年のホームドラマのお父さんのイメージが強くてギャップにびっくり。隅に置けない人だなあ。(まあ、戦後初のキスシーン俳優さんですからね。)スナックのママの手を優しーく握ってたり、芳江のオーデコロンを誉めたり、住み込みの美人助手とはめっちゃデキでたり。。警察をクビになって探偵になったという設定を活かしきったワルさと俊敏さでした。
事件のキーパーソン、田中役は沢村国太郎なので(ちょっとしか出ないけど)やっぱり豪華キャストだったなあ。

ラストはどんでん返し系ですが、ちょっと寂しいかな。

事件がつながらない前半は特に場面の切り替えが素晴らしく、編集・撮影においてもかなりカッコ良かったです。
シネコンよりハルかに安い入場料が申し訳ないくらい素晴らしい映画を観られてよかったです。
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