都部

ドラえもん のび太と鉄人兵団の都部のレビュー・感想・評価

3.8
地球侵略を画策する惑星メカトピアの軍勢との対立を描く本作は、単純明快な筋書きだからこそ無類の面白さを発揮している。軍勢による鏡面世界の破壊活動やザンダクロスを巡る一挙一動を盛大なる動と、翻ってリルルと面々の関係性を情緒的な演出と共に静かに語る語り口は、物語をより重厚なものとして昇華させている。

尖兵として転送されてくるザンダクロスを取り巻く導入のシーンで物語に強く引き込まれるのだが、日常的な世界に非日常的なスケール感を帯びたロボットのパーツが転送されてくる絵面がべらぼうに良い。それを鏡面世界で組み立てて遊んでいく内に、それが自分達の手に余る脅威的存在であると発覚する流れはスリル/サスペンスの文脈で、それより始まる尖兵:リルルの日常への介入が物語を適切に加速させていく。

ザンダクロスの陰謀を知ったことで、地球の危機の阻止と直面することになった子供達の決戦前夜の雰囲気がとても好ましい。夕焼けの中のスーパーマーケットで食材を調達して、誰もいないというのにわざわざレジに通す下りとか非日常下に立たされた子供ならではの遊び心が溢れている。傷付いたリルルを癒することになったしずかとリルルの語りも印象的で、その起源と流れを知ると人間と機械の間に境界などなく同一の存在と言っても等しいという事実に対する受容と拒絶の違いから仲違いを起こして、しずかが一人廊下で涙を流すシーンがいいですね。

負け戦と薄々察しながらも軍勢に抵抗する面々の活躍も楽しく、鏡面世界のトリックが露見して最終決戦を強いられる流れとか、他の長編映画と比較してもかなり格好良い構図で、戦闘の見せ方にも気合いが入ってたな……。結末部分の悲しいくらいあっさりとした元も子もなさが逆に感動的な流れとして作用していて、"天使"というワードチョイスの唐突さは気になったが、リルルの選択とエピローグの訪問は涙を誘う。名作。
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