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ザッツ・ダンシング!のくりふのレビュー・感想・評価

ザッツ・ダンシング!(1984年製作の映画)
4.0
【古きをより温める】

某ツタヤ発掘良品から。名前は知っていて、単純な名場面集かと思っていたが、映画におけるダンス史をしっかり刻み直しており、まさに掘り出し物!と嬉しくなった。

1985年の制作時から過去を振り返っていますが、1961年の『ウエスト・サイド物語』をピークに、以降は妙にしょぼくなり、トラボルタもマイコ―も、ジェニファー・ビールスの中の人も頑張っていますが、冴えません。

やっぱり草創期…バスビー・バークレーに始まるパワーがもの凄い。“バークレー調”ミュージカルは数本見て、見た気になっていたがとんでもない!より見たくなった。新作映画ではコレ、味わえないしね。

この徹底した様式美は、女体をモノ化して成り立つモノでもあるが、一人一人の身体表現が集まってこそだから個を否定しているワケでもなく。CGで人物コピペしても、この凄みは出ません、間違いなく。

“バークレー調”の次に来るのが、個人プレーの時代。代表はフレッド・アステアだが、テンプルちゃんも頑張っていましたね。

バレエと映画の関わりも、その力関係をさっと端折ってはいても、それなりに語っており感心。このパート担当も、ちゃんとミハイル・バリシニコフに語らせている。『赤い靴』はやっぱり金字塔だ。バレエ・リュスとの関わりに触れていないのは残念でしたが。

本作で一番売りたかったのは、MGMの黄金時代でしょう。錚々たるメンバー、続出しますが、シド・チャリシーは全然、見ておらんかったと反省。『絹の靴下』さっそく、機会あれば見てみます。

個人的には、リタ・ヘイワースがまったく出て来ないのが不満でした。コロンビア映画中心に出演していたせいだろうか。まあ、本作のメンバーに比べると、ダンス力ではちょっち、落ちるかもしれないけどさ。

『オズの魔法使』でカットされた、カカシ役レイ・ボルジャーの長尺ダンスシーンが登場しますが、何故カットされたのか不思議なくらい見事で、ここを見るだけでも、本作には価値があると思います。

ダンスは基本、生で見ないと本当の善さは伝わらない、との考えは変わりませんが、優れたダンサーはカメラ越しでも伝える力があること。

また、映画だからこそ映える身体表現だってあること。本物のプロが積み重ねれば、それらはもの凄い歴史となること。

…等々、改めて実感できる、貴重な記録でした!

現代から振り返る、同じ意図の新作も、ぜひ出てきてほしいです。

<2021.11.4記>
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