凛太郎は元柚彦

トレーニング デイの凛太郎は元柚彦のレビュー・感想・評価

トレーニング デイ(2001年製作の映画)
4.0
「倫理の存在しない町で倫理を守ってても悪は罰せない。狼を狩りたいならまずは狼になれ。内側から変えろ」
デンゼル・ワシントンはゴッサムでいうところのバットマンであって悪党ではない。彼の信条は一貫している。実際狂ってるようにみえるが、狂ってるのはLAのほうで、その町は学校で習うような道徳や常識が一切通用しない。
自分が悪に染まることでしか悪を裁けないと悟ってしまった刑事の背中に漂う哀愁が切ない。

…そんなレビューが書きたかった。書きたかったよ。だが、実際そんな甘い話じゃなかった。アロンゾは本物の悪党で、他人を信用せず利用し自分の利益だけを追求する徹底した合理主義者だ。彼の知人はこう言う。「新米だった頃は正義感溢れる若者だった」
LAという町が彼の人格を変えてしまったのか。善とも悪ともつかない、利己的な合理主義者に変えてしまったのか?
麻薬のように一度手を染めたら後戻りできない道をアロンゾは走り続けた。使えるものはなんでも使い、やれることはなんでもやった。だが、そんなゴールのない綱渡りもいつかは終わりがくる。
この映画に刑事モノやバディモノの爽快感はなく、ひたすらリアルな救いのなさと切なさがじっとりとあとに残る。
エンド・オブ・ウォッチの脚本家とだけあって、いつなにが起こるかわからないリアルなロサンゼルスを体験させられた。秀作。