垂直落下式サミング

ACACIA-アカシア-の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ACACIA-アカシア-(2008年製作の映画)
4.1
アントニオ猪木主演映画。
ロマンに生きる男。猪木寛至。当時65歳。今こそこの狂ったおじさんを世界が必要としているのです。
猪木さんが、団地に暮らす年老いた元ヒールレスラー大魔人を好演。演技経験のない猪木さんの言い回しは、孤独な老人役を妙にリアルに見せてくれる。
また、かなり身勝手な理由で大魔人に預けられることとなるタクロー少年と楽しそうに戯れる様子も微笑ましく、謎のサメごっこや人形劇もなぜだか郷愁を誘う。きわめて感覚的な映画であり、よくわからないけど、何となく不思議な優しさに包まれる映画だ。
猪木が役として物語上のキャラクターを演じてはいるが、アントニオ猪木という強靭な個は映画という枠組みに当て嵌めたところで揺るがない。大魔人が発する「タクロー!」は完全に「バカヤロー!」と同じトーンで、しかも「タクロー!タクロー!」って二回も名前を呼びます!この活力に満ち満ちた肉体をみよ!引退したとはいえ大魔人の戦闘力は衰えておらず、闘魂注入ビンタで「セイッ!」と借金取りに来たチンピラを撃退してしまうのだ!そして、「これがね、アームロックだよ」と近所の悪ガキに舐められないようにと必殺のサブミッションを伝授する!子供に殺傷力のある間接技を教えるイルマティック老人!これは闘魂継承の物語である。リングでなくとも猪木は猪木なのだ。
「出る前に負けること考えるバカいるかよ!」と、アントニオ猪木単独主演という無茶な企画を成立させた辻仁成監督には感謝で一杯だ。迷わず行けよ、行けばわかるさ!ありがとー!!!!