モスマンは実在する

BUG/バグのモスマンは実在するのレビュー・感想・評価

BUG/バグ(2007年製作の映画)
4.8
精神的に偏った人と共鳴していくことの恐怖もあるが、新しい形で世界を捉え直すことで救われる話だった。アリ・アスター監督の「ミッドサマー」にあるような、まともな思考の外側に心安らぐ居場所を見出してしまう心の過程が緻密に描かれていた。まともな思考とその外側の境界を突き抜けていく様には爽快感すらあった。極端に行きすぎて、むしろ応援したくなるような盛り上がり方だった。

妖怪や民話、そもそも神話だったり物語る行為そのものが世界を理解しようとする試みだけども、論理的に考えるのが主流の現代になって昔と同じようなことをやろうとすると、都市伝説や電波系のようなことになると思う。客観的に見て正しいかどうかという問題ではなく、精神科や心療内科で救われない人も一定数いる。そういった、他人からしてどうしようもない(あまり関わりたくない)心の浄化が描かれていた。自分はそちら側の人間で、幸せに死ぬことができれば本望なので本作を推す。