人間の営みなど意にもかえさない、雄大でただ佇んでいるだけの山。そこは、ある2人の男の永遠の場所になった。
初めこそ優しいギターの音色と、牧歌的でありのままの美しいその景色に、心の苦しさが洗われる思いがしたけれど、だんだんと、それこそ自然が人間にとって多面的な要素を持つように、ただ友情や愛の美しさだけを描いた映画だけではなかった。
そこだけを切り取れたら、きっと綺麗に見えたのかもしれないけど、今の歳で見たわたしには、もう妻たち(特にアルマね、、、)の心情を無視することはできなくて、でもこの感情を言葉にするのはなかなか難しい。
時代も違うから、価値観も違う。彼らを無責任、とも言い切れないし、だからといって美談とか悲話とも括れない。あるのは、ただ、苦しみ、悩み、生きる人間の姿だった。今のわたしと変わらない、って言ったら失礼になってしまうかもしれないけど。
それでもやっぱり感情移入してしまって、彼らの辿る結末は切なくて、あのシャツを見れば確かに愛があったことが分かって、涙が出た。
必要最低限の物だけ置かれた彼の部屋のクローゼットの中で、あの思い出の山は永遠になって、時間の流れの中に溶けていく。
言葉数の少ない映画なのに、こんなにも伝わるものがあって、なんだろうこの静かな感動。
若き俳優たちの表情が、声が、ひとつひとつ素晴らしくて、それはもちろん彼らの妻たちにも言えること。すごい作品だった。
