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アネットのyaekoのレビュー・感想・評価

アネット(2021年製作の映画)
3.6

前半は結構戸惑うシーン(歌いながらそれやるの?みたいな)多くてひとりで内心慌ててたけど、
監督さんはフランスの著名な方だそうで、わたし自身も何個かclip!してた。他はどんな作風なのか分からないけど、このロックオペラと言うらしい初めて体感する世界観は、なかなかの質量だった。

風刺のような悪いジョークと、笑えないユーモアのような場面が混在していて、気持ちの持って行き方が難しかった。
でも結果だけ見れば、ヘンリーは独り善がりで、自分しか愛してないんだけど実は自分さえ愛してないアンビバレントな性質を持った男で、終盤になってやっと彼の娘が本当はどんな姿形をしていたか気付いても、それはもうあとの祭りでしかなくて、なんとも後味は良くない。

あらすじにはアネットの誕生が彼らの人生を狂わせるとあったけど、アネットはそんな魔性を持つ訳ではなくて、ただ単に子どもの誕生によってヘンリーの自己価値や意義が強烈に揺らいで、真っ逆さまに崖を落ちていっただけの話、だとわたしは思った。わたしが誤解して受け取っただけかもしれないけど、アネットはなにひとつ悪くないなって。

それにしても、アンの舞台の奥が本物の自然の森であったり、嵐の中のヨットの上で踊るアンとヘンリーであったり(そもそもそのシーンのジャケットに惹かれて観た)、表現がこれまでに観たことがなくて、興味深かった。
ほぼほぼ台詞はなくてミュージカル調、なのは『Les Misérables』でも体験したけど、
やっぱりアネットの存在が何よりこの映画の捉え方を複雑にしてるなあって思った。
ファンタジーみたいだし、現実的だし、SFっぽいし、ホラーっぽいし、とてもひとつに形容できない。

マリオン・コティヤールはどんな時も美しくて、
アダム・ドライバーは何度かこんな顔だったっけ?ってゲシュタルト崩壊した。
日本人キャストがふと出てきてびっくりした。
正直、よく分からない世界観だったのに、最後まで観続けられたこの感情はなんなのか、まだ分からない。
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