【車男】
新作公開に向け復習ロード。この1作目は公開時にみましたが、けっこうあっけない印象でした。子供だったから過激アクションばかりが目当てで、ところがオイシイところ殆ど、CMで流れていたから(笑)。
私は、ふだん歩行者としてドライバーを見る時、車やバイクが自分の手足の延長である、という感覚のない人は恐いと思います。自分の足が他人を踏み殺そうとしているのに無頓着な人、とかいるんですよね。
車のパワーやスピードに酔いたいこともわかりますが、それに呑まれると珍走団化するわけで、そんな「人間やめますか?」という視点からの近未来を描いている映画。オーストラリアの「ぼくの前に道しかない」環境が、よりそれを加速させることも描かれていますね。
画的に面白いひとつは、爆走し狂乱する車の外観と、運転席との対比。例えば悪役No1、ナイトライダーは運転しながら大騒ぎしますが、FIXで映される運転席は妙に静かなんです。これ、車にそれだけ依存し自分を預けてしまった姿に映る。
そんな対比が、アクセルというボタンを押し、ただスピードを上げ、次の一瞬で砕け散る。というものすごく即物的な結果にすんなりと繋がる。…心に残らないのも当然(笑)。
で、釣られて爆走する警官たちも似たような対比なんですね。グースのバイク事故などもわかり易い。主人公マックスは運転席ではクールでさえあって、これが逆に、終盤で彼のMADをより際立たせることになりますね。
心理的には、メルギブの演技力では響きませんが、マックスの「暴走族との違いは、警察のバッジを付けているかだけだ、オレにはそれが…」という吐露がポイントでしょうね。
ヒーローと呼ばれる彼が車に呑まれかかっている。愛する者がいるからギリギリ、人間やめずにすんだのでしょうか。
そんな流れから終盤、まっとうな復讐劇(笑)としてはちと響かない感じ。復讐心からより、人間やめない理由がなくなって暴走するように見えます。
そもそもマックス、医者の話ちゃんと聞けよと(笑)。あの人に対し最低限の面倒は見て、声もかけてあげて、それでも復讐したいならするのが男じゃないか?あの後、仮面をバリバリ壊す描写がわかり易いですが、自分のことしか見えていないようですね。
そこからみるみるMADが加速。マックスが脚をアレされても走る、というのがシンボリックに思えます。その先での、最後の標的へのお仕置き、まさに「人間やめますか?車男やめますか?」という自虐的なものにも映る。
そして本作の段階では、マックスは車男をやめられずに彷徨うことになるわけだ。
メルギブ、演技力はう~んですが、作中一のイケメンではありますね。初公開当時、新宿二丁目方面で騒がれなかったっけ?確かに、ある激痛に悶え地を這う時の、黒皮パンツに包まれたお尻がそそるような気はする(笑)。
DVDでは、串田アキラ「Rollin' Into The Night」が流れないことが、ちょっと寂しい気はしました。
<2015.6.11記>