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二十四の瞳のtheocatsのレビュー・感想・評価

二十四の瞳(1954年製作の映画)
4.5
ネタバレ
単純な涙劇ではなくウルトラヘビーな叙事劇

シンプルな生徒達と先生の学園物語と思い込んでいたが、まさかこれほど長大重厚な一大叙事劇になるとは予想を大きく逸脱。

昭和3年から大戦をはさみ終戦後の21年までの長期スパン。

分校に女教師が赴任後の序盤から中盤にかけては何とも散文的というか、悪く言うとまとまりに欠けた散漫な展開で名匠木下監督いかがされた?とちょっと拍子抜け状態。
ところが戦争の足音が聞こえ始める頃から圧迫的雰囲気がこちらにも嫌でも伝わってきて、当時の軍国態勢に絡めとられるような疑似感覚に襲われてしまう。

子供たちも軍国教育に洗脳され兵隊を志望する者あり、後に徴兵され、女教師の旦那さんもと次々に兵隊として捕られていく。

女の子たちも貧しい家庭の子は奉公に出され、或いは一家離散、病身で床に臥す。比較的恵まれているうちの子も望んだ道へ進めないなど皆が苦しい時代。

徴兵された男子達は殆ど戦死。女教師の旦那さんも亡くなり、末っ子の長女まで柿の木から転落死と不幸の連鎖。

そしてようやく終戦。ここでこちらも圧迫感から解放されることにはなるが、映画の中の人々は皆誰もが深い傷跡を身にまとう。

一端は教壇を離れていた女教師も分校に復帰が決まり、それを知った島に残っている生徒たちが喜び歓迎会を開き、ある物を彼女にプレゼントする・・・


終盤は喉元が痛くて非情につらかったがいい意味で予想を大きく覆された「戦前・戦中・戦後の小豆島、ある女教師物語」は見て良かったと思える作品でした。

本作には小手先のテクニックによらない〝心情”が満ち溢れていた。

4.5の四つ星


上映時間を知らずに見始め、そろそろ終わりかなと思ったら残り半分と知り愕然・・・、しかしそこからがいわば本番なのでその点を留意しておくといいかも。

022010
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