津波と原発事故発生の翌日には避難が命じられ、無人の土地にされたはずの20Km圏内の2011年の春。それでも大地の営みはなんら変わらず、春の訪れと共に桜が咲き誇っている。そんな四季の美しい故郷にはもう住めないだろうと世間は言う。その現実に直面させられた人々から奪われた生活と文化と歴史。原発から40Km離れていたにも関わらず、飯舘村の大地もひどく汚染され、故郷を離れる時が刻一刻と迫っていた。 東日本大震災から一年後のベルリン国際映画祭に出品され、その後も数多くの映画祭で上映、絶賛された『無人地帯』が遂に劇場公開される。藤原敏史監督は破壊された風景と、それでもそこに住み続ける人々を見つめ、その真実の声に耳を傾け続ける。朗読には、映画監督アトム・エゴヤンのパートナーでもある女優アルシネ・カーンジャン、そして音楽には世界の前衛音楽シーンを牽引してきたベーシストのバール・フィリップスを迎え、繊細でありながらも力強い声と音楽で見る者の心を揺さぶるに違いない。