リストラを隠し借金が嵩んだ父。耄碌した義父を救護せず見殺しにした母。篤実さで家族に疚しさを植え付けていた長女。そして犯罪に手を染め家族の厄介者扱いの長男が祖父の葬儀に現れて騒動が巻き起こり、その中で家族の隠し事や不満が明るみになっていく。最前まで香典泥棒を繰り返していた山師の長男が家族に提示した借金救済案は如何にも胡散臭い。でも彼には不思議な人懐っこさがあって誰も何となく無碍にできないでいる可笑しさ。そして微塵も覇気がなく投げやりな風情を漂わせながら家族はゆるく破滅へ向かっていく。卓上に置かれた蛇イチゴだけが兄妹をぎりぎりで繋ぎ止めていたと思う。