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人生とんぼ返りのokのレビュー・感想・評価

人生とんぼ返り(1955年製作の映画)
3.6
森繁久彌山田五十鈴の芝居合戦
どちらの動きも全く無駄がなく雄弁に演技の意図を表している。

役柄の複雑さに利があった部分もあったろうがこの演技勝負、山田五十鈴の勝利だ。
森繁も凄まじく上手い、だがそれを霞ませるほどに山田五十鈴がうますぎる。

細かい仕草の畳み掛けがあまりにも的確で恐ろしい。台詞回しも一々工夫されており奥行きある感情とチャーミングさがとてもよく表現されていた。

暴力的演技力 最強、山田五十鈴。

作品通してあまりによく監督、役者、スタッフが画面をコントロールしており、全てが的確に演出演技意図を伝えることができている。
しかしであるが故に、理解できないものが世界にあるというリアリティが映画から消えてしまうのが通俗と言われる所以だろう。
山中貞雄が当時の批評家に奥行きが無いと言われ続けた様子が加藤泰の本に書いてあったが2人とも同じタイプの監督と言える。通俗映画の素晴らしい美しさを見せてくれた。
80分ぐらいにまとめられた気もするけどそこは脚本を尊重しなければいけない場合は仕方ないのかもしれない。

高村倉太郎のカメラの絶妙な被写体との距離、暗部の繊細なグラデーションの再現、奥行きの豊かさ 小池一美の美術の森繁宅のディテール、橋の周りの街並み、どれも素晴らしい


山田五十鈴
 「いきーな ちゃんと用意てあるわい」
のカットはあまりにもかわいかった 

トッケビの花嫁のキム・ゴウンを超える本年最もときめいた瞬間である
ok

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